2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素吸蔵合金における格子欠陥制御のための材料設計指針の確立
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22560697
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 正隆 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (50324801)
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Keywords | 水素吸蔵合金 / 格子欠陥 / 空孔 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
昨年度は代表的な水素吸蔵合金であるLaNi_5においてサイクル特性を改善する効果があるSnとCuについて、第一原理計算によりLaNi_5の水素放出過程における空孔の安定性に与える影響を評価し、SnおよびCuはどちらも空孔形成を抑制するという結果を得た。本年度は空孔形成を抑制するメカニズムを解明するため、化学結合状態の解析を行った。Snが空孔形成を抑制するのは、空孔を安定化させるH原子との間に反発的な相互作用が働くことによるが、状態密度図を用いた化学結合状態の解析により、Sn-H間の反発的な相互作用は反結合軌道成分の寄与によることが明らかになった。Cu-H間の結合にも反結合軌道成分の寄与があるが、Sn-H間と比較するとその寄与は小さい。Sn-H間の反結合軌道成分の寄与が大きくなる原因は、Sn 5s軌道がエネルギー的に深い位置に局在しており、H 1s軌道と強く相互作用することにより結合軌道成分だけでなく反結合軌道成分も大きくなり、エネルギー的に深い位置にあるため占有状態になり化学結合に寄与するためである。また、他の水素吸蔵合金への展開として、近年注目されている積層構造を有する水素吸蔵合金の一つであるLa_2Ni_7について、空孔形成能の評価を行った。La_2Ni_7には5種類のNiサイトが存在するが、空孔形成エネルギーは0.67~1.48eVとサイトにより2倍以上の差があることが分かった。次年度は水素吸蔵過程での空孔形成能を評価していくが、LaNi_5と異なり水素の存在位置が実験的に明らかではないため、La_2Ni_7における水素の存在位置を第一原理計算により明らかにし、空孔形成能への水素の影響を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の大きな目的である水素吸蔵合金における添加元素が空孔形成能や空孔への水素トラップ能に与える影響について、新たな知見が得られており順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは代表的な水素吸蔵合金であるLaNi_5を中心に取り組んできたが、今後は現在注目されている積層構造を有する水素吸蔵合金にも取り組んでいく。その際に、水素の位置に関する実験データが少ないことが予想されるが、水素の位置についても第一原理計算を用いて検討していく。
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