2010 Fiscal Year Annual Research Report
局在準位を利用した欠損型スズクラスレート化合物の熱電性能改善
Project/Area Number |
22560698
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岸本 堅剛 山口大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (50234216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤井 光治 山口大学, 大学情報機構, 准教授 (20314825)
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Keywords | 熱電材料 / クラスレート / 欠損 / 局在準位 |
Research Abstract |
熱電クラスレート化合物の中には,そのカゴ格子上に原子欠損を有する欠損型も存在する。そういう原子欠損はバンドギャップ近傍に局在準位を作ることが予測されており,それはキャリア伝導に影響を及ぼすと考えられる。したがって,欠損の数や配置およびそれに起因する局在準位をうまく制御すれば,熱電性能を改善できる可能性がある;具体的には,例えば,局在準位により有効質量m*を増大できれば,ゼーベック係数Sの増大,さらには,性能指数ZT(∝力因子S^2σ∝m*^(3/2))の増大を期待できる。本課題では,実験と理論の両面からこれらのメカニズムを解明し,欠損を活かした熱電性能の向上を目指すことを目的としている。 初年度2010年では,粉末焼結法で作製したn型K8Sn44クラスレートについて実験的な検討を行った。このK8Sn44は温度を変えると欠損配置が規則(低温側)/不規則(高温側)変化を起こすので,その前後での諸特性を測定・評価することによりメカニズム解明に迫った。その際に試料作製や特性測定の実験条件などを調整することにより欠損状態の変化も期待した。これまでにわかったこととしては,概して言えば,320K付近で規則・不規則変化が起こり,その前後で,1)有効質量m*は約3倍に増加する(約1→約3me(me電子質量));2)キャリア密度は約1桁増加する(~10^18→~10^19cm^-3);3)ゼーベック係数Sはほとんど変化しない(約300μV/K);4)電気伝導率σは約3倍に増加する(3→12S/cm),ということである。これに補足すれば,他に比べて電気伝導率σの増加率が小さい試料体では,同時に,ゼーベック係数Sも増大した。これらの結果より,欠損配置が不規則である場合には新たな準位が形成されていると考えてよい。
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Research Products
(1 results)