2010 Fiscal Year Annual Research Report
クラスレート半導体におけるゲスト・ホスト相互作用と熱電物性の制御に関する研究
Project/Area Number |
22560708
|
Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
阿武 宏明 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (60279106)
|
Keywords | 熱電材料 / クラスレート / ゲスト・ホスト間相互作用 / フォノン散乱 / 有効質量 / 熱伝導率 / ゼーベック係数 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究は、クラスレート半導体の特徴である多面体共有結合ネットワーク(ホスト)と多面体空隙中のゲスト原子との相互作用を明らかにし、ゲスト・ホストの操作・制御によって熱電性能を向上させるための電子構造の変調とフォノン物性の最適化を行う材料設計を構築することを目的とする。H22年度の主な成果を以下にまとめる。 1. Ba_8Ga_<16>Si_<30>系クラスレートにおいてBaゲストをEuおよびSrゲストで一部置換した化合物の合成をアーク溶融法と放電プラズマ焼結法を併用したプロセスで検討し、単一相化合物を合成するプロセス条件を見出した。SrおよびEuゲスト置換化合物の粉末X線回折・リートベルト解析から結晶構造の詳細を決定した。その結果、SrおよびEuゲストは、ゲストサイトの6dサイト(ホスト14面体中)および2aサイト(ホスト12面体中)の内、2aサイトを優先占有し、Euゲスト置換の場合に2aサイトにおける原子変位パラメータが増加することがわかった。 2. キャリア輸送特性を測定し解析した結果、SrおよびEu置換共にBa_8Ga_<16>Si_<30>系に比べてゼーベック係数が増加(有効質量が増加)する効果のあることがわかった。2aサイトのゲスト置換の場合、ゲスト・ホスト間の相互作用への影響が大きく、それが電子構造の変調をもたらすものと考えられる。 3. 格子熱伝導率は、Sr置換では殆ど変化しないがEu置換では低下する場合があることを見出した。Euゲスト置換の場合、アインシュタイン温度(2aサイトのゲスト原子)が低下すること、フォノン平均自由行程が原子間距離程度であることなどから、Euゲスト置換によるフォノン散乱増強の可能性が示唆される。 このように、Euゲスト置換では熱電性能の向上に繋がるゼーベック係数増加と格子熱伝導率減少の相乗効果があることを明らかにした。
|