2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ溶射と低温プラズマ窒化処理の複合化による高機能ステンレス皮膜の開発
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22560737
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Research Institution | Industrial Research Institute of Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
足立 振一郎 大阪府立産業技術総合研究所, 機械金属部, 主任研究員 (50359410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 順弘 大阪府立産業技術総合研究所, 機械金属部, 主任研究員 (90359365)
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Keywords | プラズマ溶射 / 低温プラズマ窒化 / 低温プラズマ浸炭 / 拡張オーステナイト / オーステナイト系ステンレス / 拡散 |
Research Abstract |
オーステナイト系ステンレス(SUS316L)のプラズマ溶射皮膜の耐摩耗性を向上させるために,低温プラズマ浸炭処理を行い過飽和炭素固溶体である拡張オーステナイト(S相)を形成して,生成機構の解明,耐摩耗性の評価および低温プラズマ窒化処理との比較を行った. 低温プラズマ浸炭処理は,623K~773Kの浸炭温度範囲でS相の形成が認められた,浸炭層の膜厚はSUS316L鋼板に浸炭処理をしたものとほぼ同じであったが,GDSによる炭素の深さ方向分布により溶射皮膜の方が固溶炭素量は少ないことが認められた.これは,溶射皮膜中の酸化物により炭素の拡散が抑制されたためと考えられる. また,耐摩耗性をボールオンディスク摩擦摩耗試験で評価したところ,比摩耗量は未処理のSUS316L溶射皮膜と比較して,約1/100減少することが確認された.すなわち,低温プラズマ浸炭処理によるS相の形成はSUS316L溶射皮膜の耐摩耗性の向上に有効であることが明らかとなった. 窒化処理との比較では,処理温度673Kおよび723Kの場合,窒化層と浸炭層で膜厚に差異はほとんど認められなかった.一方,マイクロビッカースで測定した表面硬さは,浸炭層が約1050HV,窒化層が約1300HVで,窒化層の方が表面硬度は高かった.X線回折によるピークシフトから計算した炭素および窒素の固溶量は,浸炭層が約15at%程度のCを固溶しているが,窒化層は約35at%程度のNを固溶しており,この固溶量の差が表面硬さに影響していると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーステナイト系ステンレス(SUS316L)溶射皮膜に低温プラズマ浸炭処理をすることで,SUS316L鋼材の場合と同等のS相の膜厚が得られ,さらに低温プラズマ浸炭処理により耐摩耗性の向上が認められるなど,当初の計画通り順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
低温プラズマ窒化処理と低温プラズマ浸炭処理の複合化によるS相の形成を検討する.複合処理によるSUS316L溶射皮膜内における窒素および炭素の拡散の機構を調べ,さらに硬さの断面分布を傾斜化するなどS相の機械的特性の改善を進める.また,S相によるSUS316L溶射皮膜の耐腐食性の変化を評価する.
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