2011 Fiscal Year Annual Research Report
廃棄物スラグ融液内での不均一化学反応を伴う金属揮発ダイナミクス
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22560758
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 仁樹 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (80115633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 光宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60345931)
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Keywords | 溶融スラグ / 重金属 / 揮発分離 / 廃棄物 / 溶融処理 / 塩化水素 / 酸化鉛 |
Research Abstract |
本年度は平成22年度の検討に引き続き,とくにCaO-SiO_2-Al_2O_3溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度に及ぼすHClガス雰囲気の影響を検討した. 本研究では,N_2-HCl雰囲気下でHClガス分圧を種々変化させたときの鉛化合物の見かけの揮発速度を測定した.具体的には,PbO粉末とSiO_2,Al_2O_3,CaO粉末を混合した混合スラグ試料を高温電気加熱炉内の試料セルに装填し,O_2-N_2(空気)流通条件下,1673~1773Kで溶融後,溶融スラグを一定温度に保ちながら装置内の雰囲気ガスをO_2-N_2からN_2-HCl混合ガスに切り替えて,このときの溶融スラグ中のPbOのHClガスによる塩化反応特性を調べた.また,溶融スラグから揮発した鉛化合物を捕集し,その化合物形態をXRDによって分析した. 以上の実験により,本条件下では溶融温度1673K~1773K,N_2:80%-O_2:20%ガス流速5ml・S^<-1>以上において,溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度は蒸発速度および溶融スラグ内の物質移動速度の両者に影響されることが明らかとなった.また,N_2-HCl雰囲気ではN_2-O_2雰囲気に比べて溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度は相対的に大きく,溶融スラグ中のPbQはおもにPbCl_2として揮発すると考えられた.さらに,本実験条件ではCaO-SiO_2-Al_2O_3溶融スラグからの鉛化合物の見かけの揮発速度定数はHCI分圧に比例するとともに,CaO組成比の大きい低粘度の溶融スラグほど大きくなること,および溶融温度が高くなるほど見かけの鉛化合物の揮発速度は大きくなることが認められた. 以上の結果より,溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度は(i)PbOの溶融スラグ側境膜内の物質移動,および(ii)気相-溶融スラグ界面でのPbOとHCIの化学反応の2つの過程によって律速されることが明らかにされた.この結果に基づいて,本研究では気相中の鉛化合物は気体分子運動論に従うと仮定して,CaO-SiO_2-Al_2O_3系溶融スラグからの鉛の揮発速度式を導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCaO-SiO_2-Al_2O_3溶融スラグからの鉛化合物の揮発特性を定量的に明らかにするために鉛化合物の見かけの揮発速度式を得ることが可能となった.本研究成果より,鉛の揮発挙動は溶融雰囲気によって大きく変化することが見出され,平成22年度の研究成果とも合わせて本研究目標の中核的項目を十分達成できたと考えている,そのほか,溶融スラグからの鉛の揮発に及ぼすスラグ共存成分のFeOの影響については平成24年度計画を前倒して検討することができた.一方,N_2-H_2S雰囲気での鉛の揮発挙動についての検討についてはやや計画が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画による「鉛の各種雰囲気下での溶融スラグからの揮発挙動解明」はおおむね良好に推移していることから,今後も当初の研究計画にしたがって当初の研究目標を十分達成できるものと期待される. 研究の進展過程であらたに問題点あるいは新規の検討課題が生じる場合には,当初の研究計画との整合性を図りながら本研究課題をさらに発展・充実できるものと考えている.
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Research Products
(3 results)