2011 Fiscal Year Annual Research Report
超音波の誘起する高温高圧微小気泡の温度・圧力特性の解析と精密反応制御法の開拓
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22560760
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
興津 健二 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (60295095)
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Keywords | 超音波 / キャビテーション / ソノケミストリー / 速度論 |
Research Abstract |
溶液に超音波を照射すると、数千度以上・数百気圧以上の高温高圧のキャビテーションバブルが生成し、このバブルは様々な化学反応の化学反応場として利用できる。本研究ではバブル内の高温高圧状態を解析するために、空気溶存水に超音波を照射し、高温高圧バブル内で起こる窒素の酸化反応について解析した。超音波照射により生成する亜硝酸イオンと硝酸イオンの量を定量し、超音波強度をパラメーターにとってそれらの生成量と生成比を解析することでバブル内の温度と圧力を評価することを試みた。バブル内で起こる窒素の酸化反応については、Zeldovich機構と水の分解から生じるヒドロキシルラジカルが反応に関与しているものと考えられた。バブル内以外にバルク溶液中にて亜硝酸イオンから硝酸イオンへの酸化反応が進行することが確認されたため、この反応を考慮して照射初期の結果を基に実験データを解析することにした。その結果、バブル内の温度が高くなるにつれて亜硝酸イオンが生成しやすくなることと、バブル内の圧力が高くなるにつれて硝酸イオンが生成しやすくなることがわかった。得られた結果から、窒素の酸化反応はバブル内の温度と圧力を解析するための分析プローブに利用できることが示唆された。さらに超音波を利用するパラジウム錯イオンの還元反応とパラジウム粒子の生成について検討した結果、水溶液に含まれている界面活性剤や無機塩の量とその混合比が変化すると、還元速度や生成するパラジウムナノ粒子の吸収特性が大きく変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素の酸化反応は温度と圧力に影響を受ける化学反応であることが実験と計算結果により確認できた。界面活性剤と無機塩、パラジウム錯イオンを含む水溶液に超音波照射することにより還元反応とナノ粒子生成の制御ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水溶液に超音波照射することによって誘起される超音波化学反応を精密に制御するためには、バブルの温度、圧力、ならびにその物理化学作用を包括的に理解する必要がある。特にキャビテーションの化学作用を正確に把握することが重要であり、今後の方策として金属イオンの超音波還元過程を解析することを試みる。アルコール等の有機化合物の濃度や超音波照射条件が還元過程に与える影響について検討し、還元過程を解析することにより、バブル反応場の特徴を考察する。最終的に超音波化学反応を精密制御するための方法論や指針について明らかにしたいと考えている。
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