2010 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマス再資源化プロセスの構築を目指した多機能性固体触媒の設計と開発
Project/Area Number |
22560764
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
海老谷 幸喜 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (50242269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高垣 敦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (30456157)
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Keywords | バイオマス / 固体触媒 |
Research Abstract |
本年度は、新規高機能性固体触媒の開発を通じたバイオマス由来物質の再資源化プロセスの構築を目的に、バイオディーゼル製造時に副生するグリセリンや糖類から得られる5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の選択酸化による有用化成品の合成を試みた。塩基性層状粘土鉱物の表面に貴金属を固定化した固体触媒を調製し、水溶媒中でのグリセリンとHMFの選択酸化反応に適用した。その結果、分子状酸素を酸化剤に用いたクリーンかっ効率的なグリセリンの選択酸化反応に優れた性能を示す固体触媒の開発に成功し、その触媒調製条件と活性サイトの性質および触媒活性との関連をあきらかとした。 グリセリンの酸化反応では、層状粘土鉱物ハイドロタルサイト(HT)の表面に白金(Pt)または金(Au)を固定化した触媒において、グリセリン酸化生成物であるグリセリン酸とグリコール酸への選択性が優れたPt/HT触媒とAu/HT触媒をそれぞれ見出した(ChemSusChem2011,Chem.Lett.2011)。また、Pt/HT触媒では、Pt粒子サイズとその酸化還元状態に関連があり、金属状態のPt粒子が多いほど高活性であることを見出した。さらに、Au/HT触媒では、触媒焼成の焼成温度の上昇とともにAu粒子の還元が進行し、200℃で焼成したAu/HTが優れた選択性を示すことを示した。HMFの選択的な酸化反応では、Au/HT触媒による2,5-フランジカルボン酸(FDCA)の選択的な合成に成功し、温和な条件下で選択的な性質を示す不均一系触媒の開発に成功した(Green Chem.2011)。 いずれの検討においても、塩基性層状粘土鉱物表面に貴金属を固定化した高機能触媒の開発とバイオマス由来物質の再資源化に有用な選択酸化反応プロセスの構築に繋がる新しい知見となった。
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