2011 Fiscal Year Annual Research Report
グルコース燃料電池性能向上に向けた取り組み「微生物からの電子獲得技術の向上」
Project/Area Number |
22560773
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
東 雅之 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20285282)
|
Keywords | 応用微生物 / 燃料電池 / 酵母 / グルコース |
Research Abstract |
本研究は3年計画でグルコース燃料電池に適した電池用酵母の開発に取り組んでいる。平成22年度では短時間で出力評価が可能な小型のグルコース燃料電池を製作し、代謝と出力の関係を明らかにするために、この電池を利用し野生株と変異株での出力の違いについて検討を始めた。 平成23年度は、各種変異株とくにグルコース代謝に関連する酵素の遺伝子破壊株を用い、詳細に出力評価を行った。結果として、出力が大きく上昇するような変異株は見られなかったが、顕著に出力が低下する変異株を見いだした。特にPFK1遺伝子失損株、PGI1遺伝子欠損株、PDC1遺伝子欠損株では平均出力が大きく低下した。電池溶液中のグルコース濃度やエタノール濃度を測定した結果、PDC1遺伝子欠損株では平均出力は低下したものの、消費グルコース当たりの出力は野生株に比べ高くなる傾向が見られた。グルコースからエタノールを生成しても電子は生じないので、エタノール生成に要したグルコース量からエタノールの生成以外の代謝に使われたグルコース量を計算し、そのグルコース量当たりの出力を評価すると、PDC1遺伝子欠損株では野生株に比べ非常に高い値を示した。エタノール生成への流れを弱めるような変異によりエネルギー効率を高めることが可能であることが示唆された。 また、パン酵母以外の酵母についても出力評価を行い、「平均出力はわずかにパン酵母より高い」、「エタノール生成はパン酵母より少ない」、「グルコース消費当たりの出力はパン酵母に比べ顕著に高い」という特徴を持つ酵母を得ている。この酵母や上記変異株を用い、さらに細胞内の代謝を解析することにより、出力と代謝の関係が明らかになることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母の各種遺伝子欠損株を用いて出力評価を行った結果、平均出力が上昇するようなパン酵母の変異株は得られていないが、解析を進めるに従い、グルコース消費当たりの出力が評価項目として重要で、その評価に基づくと、エネルギー効率の高い変異株が存在することが明らかとなった。また、パン酵母以外の酵母でも同様の効果が期待される酵母を得ている。これらについては現在論文をまとめている。 過去2年の研究結果から、平成24年度の研究に向けすでに詳細なグルコース代謝を解析すべき対象は得られており、計画してきた内容はおおむね進んでいると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、高効率な電池用酵母の構築を目的に、パン酵母の変異株とそれ以外の酵母を用いて、電池内でのグルコース代謝を詳細に解析する。平成23年度に有望と考えられた変異株とパン酵母以外の酵母を中心に解析するが、それ以外の変異株の解析も継続して行う。グルコース代謝と出力の関係を考察し、将来の育種方針を提言する。 エタノール量やグルコース量の分析では明確な情報が得られない場合は、質量分析機を用いて細胞内代謝産物の解析を試み、細胞内の代謝産物蓄積量と出力の関係を考察する。上記に加えて、高効率な電池用の酵母の開発に向けて、例えば、細胞内のある酵素の量を増やすことが必要ならば、発現プラスミドを構築し目的酵素の大量発現を誘導し、それらの出力評価を行う。 また、本年度も引き続きパン酵母を用いて電池構成要素の最適な条件について検討し、出力向上を目指す。
|