2011 Fiscal Year Annual Research Report
航空宇宙機のための形状記憶合金ワイヤーを用いた耐衝撃スマート構造CFRPの創製
Project/Area Number |
22560782
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宇田 暢秀 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20160260)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 幸生 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (90038092)
|
Keywords | 航空宇宙工学 / 複合材料・物性 / 構造・機能材料 / スマート構造 / 損傷 / 形状記憶合金 |
Research Abstract |
炭素繊維ドライファブリックに形状記憶合金(Shape Memory Alloy, SMA)ワイヤーを板厚方向に挿入し、このプリフォームにVaRTM (Vacuum-assisted Resin Transfer Molding,真空樹脂含浸・硬化成形)法で樹脂を含浸させ、硬化成形することによって製作した試験片のDCB (Double Cantilever Beam)試験を行い、SMAワイヤーで強化した炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)一方向材のモードI層間破壊靭性値を求めた。今年度は特に、S撚ワイヤーの形状回復力(形状記憶効果)がCFRP一方向材の板厚方向圧縮応力として十分に伝達するようSMAワイヤーの表面処理を行った。SMAワイヤーの回復力の効果を板厚方向引張試験によって求めたところ、SMAワイヤーを4本挿入した場合、板厚方向引き抜き荷重が約50%向上することが分かった。しかしながら、SMAワイヤーを挿入したモードI層間破壊靭性試験では、破壊面に大量の炭素繊維架橋が発生し、SMA回復力の効果がはっきりとは確認できなかった。さらに、板厚方向引張試験から得られたSMA回復力の寄与を考慮に入れた簡易解析モデルを用いてモードI層間破壊靭性値を算出したところ、一般に使用される板厚方向強化材の体積含有率0.5%では靭性値は約4%の向上に留まることが明らかになった。 他方、CFRP層間破壊靭性値の統計的特性を理解するための基礎研究として、CFRP継手構造の確率論的強度解析を行った。また、CFRP補強パネルに適用する精細な非破壊検査手法の確立を目指し、CFRP補強パネルにおけるLamb波伝播特性の解明に関する研究も進め、SMAワイヤーを用いた耐衝撃スマート構造CFRPの創製に必要な基盤研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SMAワイヤーの形状回復力が、CFRP層間破壊靭性の向上に寄与する効果を明らかにするために、SMAワイヤー縫合糸は試験片成形後に試験片表面で切り揃えたが、層間破壊靭性測定試験やSMAワイヤーが備えるべき粂件の解析的研究は進めた。SMAワイヤーを用いた損傷同定手法に関する基礎研究も行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
SMAワイヤーの形状回復力をCFRP一方向材の層間破壊靭性向上に利用するためには、SMAワイヤーの表面処理に更なる工夫が必要である。今年度まではSMAワイヤーを縫合糸として用いた場合の縫合方向や縫合糸たるみの影響を除去するために、SMAワイヤーは試験片成形後に試験片表面で切り揃えたが、次年度は縫合したままの状態で層間破壊靭性試験を実施する。CFRP中の損傷同定においても、縫合したSMAワイヤーを用いる方が検知能は高くなることが期待できる。
|
Research Products
(10 results)