2010 Fiscal Year Annual Research Report
パーティクルフィルタによる宇宙用ロバスト制御の研究
Project/Area Number |
22560787
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
森田 泰弘 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80230134)
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Keywords | 航空宇宙工学 / ロバスト制御 / パーティクル・フィルタ |
Research Abstract |
平成22年度は、研究の基礎を築くべく、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)の概念を数学的に定式化し、宇宙システムの制御に適用するための解析環境を整えた。すなわち、パーティクル・フィルタを用いて、限られた観測情報(センサ出力)から状態量、および、制御対象の動特性を規定するパラメータ(システム・パラメータ)を推定するためのアルゴリズムを導出し、数値計算コードを構築した。これにより、単純な状態フィードバックにより制御器を構成する通常の線形制御理論と融合させることが可能な形式となった。 このことはパーティクル・フィルタの最大の利点の一つである。つまり、これまで宇宙ロケットにも適用されてきたH_∞制御やμ制御などいわゆるポスト現代制御理論に代表されるようなロバスト制御理論は、理論に基づき設計される制御器が一般に高次の特性をもち、実際の宇宙システムへの適用にあたっては、新たに理論の再構築が必要であった。加えて、制御の本質を損なうことなく制御器の次数を低減するための考察に相当の困難を極めた。一方、パーティクル・フィルタの理論によれば、制御対象の状態量だけでなくシステム・パラメータも推定できるため、制御のアルゴリズム自体は極めて簡便なものですむ。ロバスト制御に新時代をもたらすと期待することができよう。 研究の実施に当たっては、航空宇宙システムの制御の分野において、欧米でも最先端の研究活動を行っている米国・コロラド大学、およびスロベニア・リューブリァーナ大学と連携して、その協力を得ながら進めている。ともに、ロバスト制御の分野では欧米を代表する研究機関であり、本研究の遂行にあたって、最も適切な協力相手である。なお、平成22年の旅費はリューブリァーナ大学との研究交流を行うためのものである。
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