2012 Fiscal Year Annual Research Report
磁気島効果を含む圧力上昇時のトロイダルプラズマの巨視的構造変化の研究
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22560822
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
市口 勝治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (90211739)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核融合プラズマ / 電磁流体力学 / 圧力駆動型モード / ヘリオトロン / 数値シミュレーション / マルチスケールスキーム / 簡約化MHD方程式 |
Research Abstract |
平成23年度では、背景磁場の変化を取り込んだ電磁流体力学的数値シミュレーションを発展させた。大型ヘリカル装置(LHD)では、放電中に磁場を変化させる実験が精力的に行われている。その中の一つである、背景垂直磁場を変化させて磁気軸位置を放電中に内側へシフトさせる実験では、あるシフトのところで電子温度分布に崩壊現象が観測されている。そこで、この崩壊現象を数値シミュレーションで再現することにした。この場合、背景磁場の変化をシミュレーションに取り込むことが本質的である。しかし、背景磁場の時間変化は、プラズマダイナミクスの時間変化に比べて、10の5乗程度ゆっくりとしている。そこで、このかけ離れた時間スケールを同時に取り扱うために、マルチスケールスキームを開発した。このスキームでは、一定間隔のダイナミクス計算と、平衡計算を交互に繰り返すことによって、両方の時間スケールを取り扱う。ダイナミクスの計算では、簡約化MHD方程式に基づいて、早い時間スケールの摂動の時間発展を追跡する。平衡計算では、背景磁場の変化とその時点でダイナミクス計算から得られている圧力分布とを取り込んで新たな平衡を計算する。この平衡の変化が、ゆっくりした時間スケールの変化に対応する。このシミュレーションを行った結果、背景磁場を固定した場合にはプラズマは安定であるが、変化させた場合には崩壊現象が生じることを示すことができた。また、このとき生じた摂動は交換型モードではなくインファーナルモードであること、また、その支配的なモード数が実験で観測されたものと一致しているということも示すことができた。LHDでは、放電中に垂直磁場の代わりに摂動磁場を変化させる実験も行われており、磁気島の実時間の挙動が研究されている。今年度開発したスキームをこの実験にも適用することが、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気島による核融合プラズマの構造変化を調べる上で、必要となる知見の蓄積及び解析手法の開発が着実に進んでいる。 まず、静的磁気島と交換型モードの相互作用に関する基本的な知見を得ることに成功した。静的磁気島と交換型モードとが相互作用する状況は2通り存在する。一つは、摂動磁場が印加されても平衡圧力分布がそれに応答する前に交換型モードが成長する場合であり、磁場には磁気島が存在するが、圧力分布は入れ子状の磁気面に対応した形状になっている場合である。もう一つは、圧力分布が磁気島形状に対応した分布を持った平衡状態であり、圧力分布が磁気島形状に合う形を保ちながらゆっくりとベータ値が上昇し、交換型モードの安定限界に達したような場合である。前者の場合には、圧力分布の変形がないため、抵抗性交換型モードの成長率に対する磁気島の影響は非常に小さい。これに対し、後者のほうは、共鳴面において圧力分布が平坦化するため、磁気島の存在は交換型モードの安定化に寄与し、磁気島幅に対して安定限界の閾値が存在する。一方、非線型飽和後の磁気島は場に関しては、どちらの場合においても、最終的な磁気島幅は、印加した静的磁気島幅と、摂動磁場がない場合の交換型モードによる磁気島幅の和で決まることが得られた。 一方、プラズマの構造変化は、背景平衡の変化によって大きく変わるため、背景平衡の変化を取り込んだ解析手法が必要である。一般に、背景平衡の変化の時間スケールは、プラズマの電磁流体力学的なダイナミクスの時間スケールよりも遥かに長い。そこで、この両者を同時に取り扱うために、マルチスケール手法を開発した。この手法は、非線型ダイナミクス計算と平衡計算とで構成されており、前者が短いスケールの時間発展に対応し、後者が長い時間スケールの時間発展に対応する。この手法は、今後の摂動磁場変動を含んだプラズマの構造変化の解析に極めて有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2通りの方向で、摂動磁場による構造変化の解析を推進する。 一つは、三次元形状での静的磁気島と交換型モードとの相互作用の解析である。これまでの両者の相互作用の解析では、基本的な性質を調べるため、直線ヘリオトロン配位を用いてきた。しかし、実際に生じる相互作用はヘリオトロンプラズマで観測されており、三次元形状の効果を調べておく必要がある。そのために、三次元平衡解析コードHINT2と三次元非線型MHDダイナミクス時間発展コードMIPSを利用する。両者とも、平衡解として入れ子状の磁気面の存在を仮定していないため、摂動磁場による磁気島の効果をそのまま取り入れることができる。これらのコードを用いて、摂動磁場がある場合とない場合を比較して、直線配位での知見との比較を行う。特に、線型安定性に対する安定化の寄与、モードと静的磁気島との位相の関係、異なるモード数を持つ磁気島と不安定モードとの相互作用、非線型飽和後の圧力分布及び磁場配位の変化等について着目する。 もう一つは、放電中に摂動磁場を変化させたときの磁気島の変化の解析である。この場合、摂動磁場を徐々に増加させ、プラズマ中への浸み込みの度合いを調べ、実験との比較を行う。この解析においては、摂動磁場の変化はプラズマダイナミクスの変化に比べて時間スケールが非常に長いので、これまでに開発してきたマルチスケールスキームを活用する。このとき、平衡の計算においては、入れ子状の磁気面を持つ部分だけとなることに注意する必要がある。
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Research Products
(13 results)