2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁気島効果を含む圧力上昇時のトロイダルプラズマの巨視的構造変化の研究
Project/Area Number |
22560822
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
市口 勝治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (90211739)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 核融合プラズマ / 電磁流体力学 / 共鳴摂動磁場 / 圧力駆動型モード / ヘリオトロン / 磁気島 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
平成25年度は、ヘリオトロン配位における構造変化について、2通りの電磁流体力学的(MHD)解析を行った。 一つは、簡約化MHD方程式を用いた解析であり、昨年度開発したマルチスケール数値シミュレーション手法を高性能化した。特に、プラズマの放電中に背景磁場を変化させる実験を解析するための手法を改良した。この手法は、摂動の時間発展と平衡量の時間発展を同時に取り扱う手法である。以前のものは、平衡圧力分布の計算においてのみ、摂動のダイナミクスの効果を取り入れられるようにしていた。今回、平衡回転分布の計算においても、ダイナミクスの効果を取り入れられるようにした。また、初期条件においても、圧力分布には実験で得られたものを用い、回転変換分布には、以前のシミュレーションにおいて非線型飽和したときに得られるものを用いた。その結果、背景磁場の変化がない場合にはプラズマは安定で、背景磁場を変化させた場合には崩壊現象が生じるという実験結果を再現することができた。また、崩壊が生じた後も加熱入力によって圧力が回復するため、崩壊現象が繰り返し生じるということも再現されている。 もう一つは、三次元解析コードを用いた、共鳴摂動磁場(RMP)による構造変化の解析である。RMPが印加されると、プラズマ内に磁気島が生じ、それによって圧力分布が変化する。このような状況に対応する平衡を計算するために、HINT2コードを用いて計算を行った。計算の結果、磁気島の内部の圧力勾配が低減されるような平衡解が得られた。この平衡解の安定性をMIPSコードを用いて調べたところ、RMPがない場合に不安定となる交換型モードではなく、モード構造が局在するバルーニング型の不安定性が成長することが得られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の解析により、外部から磁場変化に対応するプラズマの構造変化について、シミュレーション手法の高性能化と、知見の蓄積が着実に進展している。外部からの磁場の変化の時間スケールが、電磁流体力学的応答の時間スケールよりもずっと長い場合には、簡約化方程式に基づいたマルチスケール手法が完成した。また、外部から摂動的な磁場が印加された場合においては、三次元コードを組み合わせた手法が進展しつつある。 前者においては、これまで再現が困難であった実験結果が数値シミュレーションによって再現できるようになり、構造変化に対する詳細なメカニズムが明らかになってきている。 また、後者においては、共鳴摂動磁場の解析における三次元的な手法の重要性が明らかになっている。これまでは、直線ヘリオトロン配位を用いた解析を行ってきた。この場合、磁気島内部において圧力が平坦化されることにより、プラズマの安定性が改善されると理解してきた。これは、円柱形状のために、摂動の取り得る構造として、交換型モードしか許されていなかったためである。一方、三次元形状を正確に取り入れることにより、励起される不安定性の自由度が増し、別の構造を持つ不安定性が新たに発現することが得られた。このことにより、今回、必ずしも、外部からの共鳴摂動磁場が、安定化効果を持つわけではないことを示すことができた。 このように、解析手法の進展とともに、プラズマの振舞いに対する理解も進展してきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、プラズマフローと圧力駆動型モードとの関連を中心に解析を進めていく。近年の実験においては、プラズマフローによる回転の停止と圧力分布の崩壊とが強く関連していることが示唆されるようになった。そこで、本研究においても、フローの効果をシミュレーションに取り入れる。 まず、プラズマ圧力による反磁性効果を三次元ダイナミクスコードであるMIPSコードに取り入れる。一般に、反磁性フローは、圧力駆動型モードに対して安定化効果があることが知られている。特に、高波数モードに対する安定化の寄与が大きい。これまでの安定性解析結果は、実験よりも若干不安定な結果を示してきた。また、実験では、低波数のモードが崩壊現象を生じさせている。そこで、この反磁性フローによる安定化効果によって、これまでの計算結果を実験結果に近づけることが期待される。また、交換型モードによる構造変化として、圧力分布の局所的平坦化が生じうるが、この局所平坦化は、モードの駆動力を低減するために安定化効果を持つことがわかっている。しかし、一方で、反磁性フローも圧力勾配によって生じており、圧力分布の局所平坦化が生じると、フローも低減されることになる。そこで、この両者の効果がどのように競合するのかについて、非線型シミュレーションを用いて明らかにする。 プラズマフローは反磁性フローだけでなく、径電場によるフローも存在する。そこで、この径電場によるフローの導入も検討する。この場合、径電場のプロファイル及びその大きさについては、実験で得られているものを用いることとする。このようなフローは、動径方向にシアを持っているため、不安定性のモード構造を変形することによって安定化の寄与を持つと考えられる。一方で、このフローはケルビンーヘルムホルツ不安定性も励起する可能性がある。従って、この場合においても、安定化に対する競合の議論を行う。
|
Research Products
(7 results)