2012 Fiscal Year Annual Research Report
クーロン爆発イメージングと二次電子測定による高速クラスターイオンの近接効果の解明
Project/Area Number |
22560833
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
鳴海 一雅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究主幹 (90354927)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 高速クラスターイオン / 固体内原子衝突 / 二次電子放出 / 近接効果 |
Research Abstract |
複数の原子が結合しイオン化したクラスターイオンが高速(ボーア速度以上)で固体と衝突する際に誘起される二次電子放出には、近接効果と呼ばれる未解明の物理過程がある。本研究では、この近接効果の起源を解明することを目的とする。 平成23年度までに、近接効果に対する二次電子の生成過程の寄与と輸送過程の寄与のバランスが、ターゲットとなる非晶質炭素薄膜の厚さ、即ち薄膜出射時の解離イオンの核間距離に依存することを示唆する実験結果を得た。そこで平成23-24年度は、この生成過程と輸送過程の寄与のバランスの速度による変化を明らかにするために、特に近接効果が負から正へ転じると期待される領域を含めて速度を大きく変化させ(62.5-250 keV/u)、近接効果の膜厚依存性(厚さ1-100 μg/cm2)を詳細に調べた。入射イオンとしては2原子分子イオンのH2+とC2+を用いた。また、薄膜出射時の解離イオンの核間距離は、クーロン爆発を考慮した薄膜中での軌道計算シミュレーションによって評価した。その結果、エネルギー損失に対する近接効果の核間距離依存性との比較、さらに速度依存性の類似性から、核間距離が約1 nmより小さい場合には、二次電子の生成過程(即ち、入射イオンのエネルギー損失)に対する近接効果が優勢であること、また、核間距離が約1 nmより大きい場合には輸送過程での近接効果が支配的であることを明らかにした。さらに、輸送過程での近接効果はH2+の場合には正に、C2+の場合には負になった。この結果は、輸送過程における近接効果を説明する現在有力なモデルでは説明できず、近接効果の起源として新たな物理過程を示唆している可能性も考えられる。しかし、この結果の解釈を含む二次電子放出に対する近接効果の起源の解明には、実験結果のさらなる検討が必要であり、今後も引き続き研究を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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