Research Abstract |
本研究は,天然ガスを主燃料として吸気管に供給し,バイオディーゼル(以下BDFと表記)を着火燃料として燃焼室内に噴射する'二元燃料方式ディーゼル機関'の性能,排ガス特性,燃焼特性について解明することを目的とする.BDFは「カーボンニュートラル」の特性を有する石油代替燃料であるが,周知のように,わが国においては廃食油(動植物油脂)を原料とするBDFを使用せざるを得ない状況にある.廃食油BDFでは多様な原料油脂の混入が避けられず,この場合,油脂を構成する脂肪酸の種類と組成が多様であることに起因して,BDFに改質後の脂肪酸メチルエステル(FAME)組成は異なったものとなる.一方,二元燃料ディーゼル機関において,主燃料である天然ガスの供給量を増していくと着火燃料の噴射量が減少するために着火が不安定となり,燃焼変動が生ずる.したがって,安定運転領域は着火燃料のセタン価によって規定されるものと思われる. 本研究では,BDFを構成する主要なFAMEのうち,オレイン酸メチルならびにラウリン酸メチルをベース燃料に採用し,これらとパルミチン酸メチルとの混合物を作製し着火燃料に適用した.実験の結果,FAMEを着火燃料とした場合には軽油着火に比べ着火時期が進角し,スモーク濃度が顕著に低減することが明らかとなった.また,セタン価を規定する標準燃料を調製し,二元燃料ディーゼル機関の着火燃料として適用した結果,セタン価が70および100の標準燃料では,機関性能,排ガス特性,燃焼特性は軽油着火の場合と大差のないことがわかった.一方,セタン価が45未満の標準燃料では,天然ガス供給割合が増加につれて着火遅れが長くなり,機関性能が著しく悪化した.したがって,二元燃料ディーゼル機関の着火燃料として適用可能なセタン価の下限は45程度であることが明らかとなった.
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