2011 Fiscal Year Annual Research Report
テロメア恒常性に関与する多面的シグナルの統合・応答メカニズム
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22570002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松浦 彰 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 教授 (10272692)
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Keywords | 染色体 / テロメア / 相同組換え / テロメラーゼ / CST複合体 |
Research Abstract |
テロメアのもつ末端保護機能により、テロメア間の組換えは抑制されているが、テロメアが短縮した異常な条件においては、組換えが活性化する現象がみられる。また、多細胞生物の発生初期やES細胞においても組換え依存的経路が活性化することが知られている。しかしテロメアの組換え依存的維持の分子機構は未だ明らかでない。昨年度までの研究で、我々は出芽酵母のテロメアタンパク質をコードするSTN1の特異的変異を持つ細胞が、テロメアが正常であるにも関わらず組換え依存的な増殖を示すことを見いだした。本年度は、この増殖がどのようなメカニズムにより引き起こされているのかについて、遺伝学的、分子生物学的手法によりアプローチした。 1)STN1の特異的変異株が増殖可能となる遺伝的条件:組換え関連因子の遺伝子破壊との二重変異株を作成して解析した結果、stn1変異株ではtype Iテロメア組換えが起きていることが示唆された。しかし組換えはテロメア反復配列のみでおきており、より内側のサブテロメア配列には構造的変化はみられなかった。 2)テロメラーゼと組換えとの関係:テロメラーゼの発現量の多少と、組換え依存的細胞の出現頻度は負に相関していた。このことから、テロメラーゼが単にテロメア長を制御する以外の、末端恒常性維持に関わる働きをしていることが明らかとなった。このことは、テロメラーゼのテロメアへの接近を抑制する因子の変異株において組換え依存的細胞の出現が阻害されることからも支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テロメアを維持する二つの機構(テロメラーゼ依存的機構とテロメラーゼ非依存的機構)を切り換える分子スイッチの実体に迫りつつあり、研究の目的をほぼ達成できていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
テロメア維持経路の選択性の分子機構の解析は順調に進んでおり、酵母以外の生物でも同様な現象が普遍的にみられるかについても検討したい。テロメア異常に対する細胞応答機構についても知見が蓄積しつつあり、今後はこの点も詳細に解析を行いたいと考えている。
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