2011 Fiscal Year Annual Research Report
複数の転写因子によるクロマチン構造の二段階変化の解析
Project/Area Number |
22570006
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石原 直恵 (琴村 直恵) 藤田保健衛生大学, 医学部, 研究員 (50571791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 悟 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00300723)
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Keywords | クロマチン / 転写調節 / プロモーター / ヒストン / アロマターゼ |
Research Abstract |
クロマチン構造内に収納されたDNAからmRNAが遺伝子座特異的に合成されるには、その構造ゆえの障壁を特定のプロモーター領域から取り除き、RNAポリメラーゼを結合させる必要がある。さらに、必須なステップである転写因子の結合を考慮すると、転写反応の分子機構には多段階から成る階層性の存在が考えられる。 我々は、昨年度までに、複数のプロモーター(上流からIa、Ib、Icという)を持つアロマターゼ遺伝子を具体例に、クロマチン構造とプロモーターの転写活性との相関を明らかにしてきた。SEVENS法によりオープン構造と判断されたプロモーターの転写活性は高い一方で、不活性なプロモーターのクロマチンはクローズであることが、単一遺伝子座を用いたこの解析で明らかになった。今年度は、この遺伝子の各プロモーターのクロマチン状態が決められる仕組みを探る糸口として、130kbに及ぶアロマターゼ遺伝子全域の構造を明らかにした。 アロマターゼ遺伝子を発現しないヒト子宮由来のHeLa細胞では、遺伝子座の全域に渡ってクローズ構造であったが、第3イントロンの一部に局所的なオープン構造が見られた。興味深いことに、この場所のオープン構造はヒト卵巣由来のKGN細胞でも見られ、活性を持つIcプロモーター領域と共に2つのオープン構造のピークが観察された。ヒト肝臓由来のHepG2細胞では、活性を持つIbとIcプロモーターに加えIbから20kb下流域でオープン構造のピークが、また、全てのプロモーターが使われるヒト胎盤由来のJEG-3細胞では、3つのプロモーター領域と共にIbの30kb下流にオープン構造が見られた。重要なことに、これらのオープン構造の領域以外では比較的クローズな構造が見られるので、この遺伝子座のクロマチンのデフォルトはクローズ構造で、何らかの活性化機構がピンポイントでクロマチンをオープンにする可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アロマターゼ遺伝子座全域に渡ってクロマチン構造を詳細に調べた結果、クローズなクロマチン構造がこの遺伝子のデフォルトである可能性が示された。この知見は、転写反応に対するクロマチン構造の一次的な調節を探る上で極めて重要であり、今後の研究によって転写反応の分子的な機序が明らかにされることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
アロマターゼ遺伝子における転写活性を持つプロモーターのオープンなクロマチン構造は、エピジェネティクな分子機構によけ形成されることが想像される。そこで、今後は、各プロモーターにおけるピストンの化学修飾の調査を遺伝子座全域にまで広げ、構造のデータと比較することによってオープン構造を作り出す分子基盤、並びに、デフォルトと考えられるクローズ構造の分子基盤を明らかにする予定である。
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