2011 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖スケジュールの変動パターンが多年生植物の絶滅確率に与える影響の数理的解析
Project/Area Number |
22570011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 壮則 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (80206755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 雅 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (90194274)
金子 有子 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 専門研究員 (90280817)
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Keywords | 多年生植物 / 繁殖スケジュール / 絶滅確率 / 撹乱パターン |
Research Abstract |
本研究で対象としている生活史の異なる木本種2種(トチノキ,サワグルミ)、林床植物3種(エンレイソウ、オオウバユリ、バイケイソウ)について、集団解析に使用する目的で、これまで個体にマーキング処理を施してある永久調査区において、個体の成長、生存、死亡に関わる継続追跡調査を行った。また、生活史パラメーターの変動が個体群の増加率に与える影響を評価する個体群増加率の感度や弾力性を用いる方法について検討が加えられ、トチノキの生命表反応実験(LTRE)という手法を用いる解析をおこなった。また、自然撹乱パターンおよび繁殖スケジュールを組み込んだ数理モデルを開発し、サワグルミのセンサスデータを対象にして試算を行った。 それらの研究の結果,トチノキでは生命表反応実験いう手法を用いることによって,台風という自然撹乱が生息場所依存的に異なる影響をトチノキ集団に与えることや,集団動態の時空間的変動を反映する集団の維持機構、すなわち集団動態のKey stage, Key processが同定された。その研究成果を英文論文としてJournal of Ecology誌に投稿した。また、昨年度に開発された数理モデルについて、コンピュータープログラムを組み、植物集団の絶滅確率について試算を行ったが、いくつかの修正が必要になったため修正プログラムによる再試算を開始した。また、サワグルミの数理モデル研究では、大型台風の頻度とマスティングの協同効果が集団動態に大きな影響を与えることがわかったため、台風頻度とマスティング間隔をパラメーターとしたシミュレーションプログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はトチノキの生命表反応実験(LTRE)を用いる解析をおこなった。その結果、台風という自然撹乱が生息場所依存的に異なる影響をトチノキ集団に与えることや,集団動態の時空間的変動を反映する集団の維持機構、すなわち集団動態のKey stage, Key processが同定された。その研究成果を英文論文としてJournal of Ecology誌に投稿した。しかし、その後昨年度に開発された数理モデルについて、4通りの繁殖スケジュールと4通りの撹乱パターンの組み合わせ(全16通り)に対してコンピュータープログラムを組み、植物集団の絶滅確率について試算を行ったところ、いくつかの修正が必要になったため修正プログラムによる再試算を開始した。そのため、試算終了後の計画としてトチノキの個体追跡データの入力アルバイトを雇用する予定が延期された。それに伴って、サワグルミに関する解析も遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究進展に約5ヶ月の遅れが生じたため、トチノキ、およびサワグルミの研究成果を発表するための準備期間が短縮されることとなった。次年度8月までは、トチノキ、サワグルミの個体追跡データの入力を完成させる予定である。9月以降は修正後のシミュレーションプログラムを完成させた上で、トチノキ、サワグルミの両種に対して集団動態のKey stage, Key processを同定し、4通りの繁殖スケジュールと4通りの撹乱パターンの組み合わせ(全16通り)に対して植物集団の絶滅確率を計算する。また、次年度は本プロジェクトの最終年度であるため、それらの成果を英文論文としてまとめ投稿する予定である。
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