2012 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化がもたらす時間的隠れ家の増大によるカイガラムシのエスケープの検証
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22570012
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
安田 弘法 山形大学, 農学部, 教授 (70202364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 満 山形県森林研究研修センター, その他部局等, 研究員 (00502585)
浦野 忠久 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (60353603)
齊藤 正一 山形県森林研究研修センター, その他部局等, その他 (80502583)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カイガラムシ / 寄生蜂 / 温暖化 / 理論モデル |
Research Abstract |
温暖化がもたらす影響は、生物によって異なる。この影響の相違は、生物間相互作用に働き、系の動態を変化させる可能性がある。このような現象は、寄主と、それに生活史を同期させている寄生者の間で起こりやすく、特に、寄主の特定の発育段階しか利用できない単食性の捕食寄生者に対して致命的に作用すると考えられる。現在、このような機構によって天敵寄生蜂の個体群成長が阻害され、寄主であるカイガラムシの大発生を引き起こしたと思われる事例が、東日本の里山地域を中心に起こっている。申請研究では、温暖化が種間相互作用に影響を与え害虫を大発生させる機構について考察し、理論研究と実証研究を組み合わせて解明することを研究課題の最終目的としている。平成24年度は以下の研究成果を得た。 I.カツラマルカイガラムシ及び寄生蜂Pteroptrix sp.の基礎的な生活史特性及び寄生行動の解明 カイガラムシの若齢の分布様式について調査した。その結果、カイガラムシの定着場所としては、直径が1cmから1.5cmの枝を好んで定着する傾向があった。一方、垂直分布に関しては地表面から40cmから50cmの部位を好んで定着していた。このような生息場所の選択性の要因を検討中である。 II. カツラマルカイガラムシの理論モデルの構築 昨年、日本の各地域の平均気温を入力すると、カイガラムシの1年の化性と発育段階を予測するモデルを作成した。このモデルをもとに日本各地域でのカイガラムシの分布拡大に関するシュミレーション実験を行った。現在、この結果を解析し、カイガラムシの分布拡大と温度との関係を考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルの作成とシュミレーション実験により、温暖化がカイガラムシの大発生に及ぼす影響を予測しつつある。一方、カイガラムシ及び寄生蜂の飼育は容易ではなく、この2種の種間相互作用を解明する実験は、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
寄生蜂及びカイガラムシの飼育は、山形大学で担当することにしていたが飼育に熟知している森林総合研究所で対応することにした。さらに、この2種の生活史特性に関する実験も森林総合研究所で実施することとした。
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