2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会寄生種ヤドリウメマツアリの寄生行動と進化機構の解明
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22570013
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大河原 恭祐 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (70283091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40414875)
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Keywords | アリ / 社会寄生 / ホスト / 化学擬態 / 軍拡競争 |
Research Abstract |
本年は2項目について以下の結果が得られた。 (1)ヤドリウメマツアリのブルードの化学擬態について実験と観察を行った。寄生コロニーを飼育し、そのヤドリウメマツアリ女王の産んだ卵とそれから発生した幼虫や蛹の体表成分を有機溶媒で抽出した。また、そのコロニーのホスト女王が生産したブルードの体表成分も抽出し、それらをGC分析によって炭化水素成分を分析した。その結果、寄生種とホストの幼虫や蛹は類似した炭化水素組成を示したが、それはホストワーカーの成分と類似していた。また卵には特定の炭化水素組成が共通してみられたが、それらは卵特有の成分であると考えられ、卵ステージでは認識に関する成分はないと考えられる。以上のことからヤドリウメマツアリのブルードは幼虫ステージ以降にホストコロニーの認識成分を獲得していると考えられる。 (2)本年はヤドリウメマツアリが寄生していないウメマツアリ短翅型女王コロニーにヤドリ女王を人為的に導入し、その定着と抵抗性の有無を観察した。導入成功率は非常に高く、全ての実験コロニーで導入が成功した。 また、その後飼育を継続すると、約50-60%でヤドリウメマツアリの新成虫の羽化を確認した。このことから長翅型女王と比較すると、短翅型女王コロニーはヤドリウメマツアリの寄生への抵抗性は低いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の1つであるヤドリウメマツアリの社会寄生進化の至近的メカニズムについては、女王の化学擬態とブルード養育における化学擬態の過程が体表成分の化学分析によって明らかとなっている。またもう1つの目的である社会寄生進化とホストの抵抗性質進化の関係については、本来ホストの祖先種であったウメマツアリ長翅型集団には養育時のヤドリブルードの排除などの、寄生種への抵抗的性質があることが示唆されている。これら結果とヤドリウメマツアリとウメマツアリの系統関係から、寄生者-縮主間の進化過程がわかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤドリウメマツアリの社会寄生進化の至近的メカニズムについて、ブルードの化学擬態の実験での検体数がやや少なかっため、追加実験を行う予定である。またホストの抵抗性質進化については、長翅型女王コロニーで抵抗的性質があることが示唆されたものの、それら実験では飼育期間等に問題がある可能性があったため、再実験を行う。
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Research Products
(1 results)