2010 Fiscal Year Annual Research Report
送粉者の訪花選択性が高山植物群集の開花フェノロジーに及ぼす影響
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22570014
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
笠木 哲也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 研究員 (10401887)
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Keywords | 訪花昆虫 / ポリネーター / 開花フェノロジー / マルハナバチ / ハナバチ類 / 外来植物 / 高山植物 / 結実成功 |
Research Abstract |
本研究は送粉者の出現季節や行動特性と植物群集の開花フェノロジー構造の関係を解明するものである。本年度は低地から高山帯までの広域的なスケールで調査サイトを設定した。植物とハナバチ類のネットワーク関係を明らかにするため、開花植物全種について開花フェノロジーをモニタリングするとともに、訪花したハナバチ類の同定と訪花頻度の調査を行った。 その結果、ハナバチ相は低地ではヒメハナバチ類やコハナバチ類など小型のハナバチ類が種数、個体数ともに多く、低地から高山帯にかけて標高が上がるにつれてマルハナバチ類の占める割合が高くなることが明らかになった。低地で優占する小型ハナバチ類は多くの種が複数種の植物に訪花したが、特定の植物種に対して比較的強い訪花選好性を示すスペシャリスト的な行動特性を示すハナバチ種が存在することを明らかにした。このことはハナバチ類全体と開花植物群集のネットワーク関係を解明するための手がかりとして非常に重要である。 次に、低地では多種の外来植物が開花したが、そのうち数種の外来植物が非常に高い開花密度を示すことを明らかにした。また、いくつかの外来植物種は開花期間が数ヶ月に及ぶなど、在来植物とは異なる開花フェノロジーの特徴を示した。これらの外来植物には多種の小型ハナバチ類が高頻度に訪花しており、在来植物に対する訪花頻度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。例えば、ブタナが開花しない地域では在来植物に多種類の小型ハナバチが訪花したが、ブタナが開花する地域ではそれらのハナバチ類がブタナに誘引される傾向があった。このように外来植物の開花は植物とハナバチ類の送粉系相互作用を撹乱する要因となることを示唆した。
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