2011 Fiscal Year Annual Research Report
送粉者の訪花選択性が高山植物群集の開花フェノロジーに及ぼす影響
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22570014
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
笠木 哲也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 連携研究員 (10401887)
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Keywords | 訪花昆虫 / ポリネーター / 開花フェノロジー / マルハナバチ / ハナバチ類 / 外来植物 / 高山植物 / 結実成功 |
Research Abstract |
本研究は送粉者の出現季節や行動特性と植物群集の開花フェノロジー構造の関係を解明するものである。手取川水系に沿って標高200mほどの地点から白山山頂付近の標高約2,600mの範囲に、樹林帯3ヶ所、亜高山帯3ヶ所、高山帯6ヶ所の合計12プロットを設定した。植物とハナバチ類のネットワーク関係を明らかにするため、各プロットで開花植物全種について開花フェノロジーをモニタリングするとともに、訪花したハナバチ類の同定と訪花頻度を調べた。 その結果、マルハナバチ類は標高800mの樹林帯より高標高の地点にかけて広く分布していた。標高800mの樹林帯と標高2,100m以上の高山帯ではシーズンの比較的初期からマルハナバチの活動が観察されたが、標高1,300mから2,000mの間のブナ帯、亜高山帯はシーズン中期からマルハナバチの個体数が増加した。シーズン後期には高山帯でのマルハナバチの活動が見られなくなり、亜高山帯が採餌活動の中心エリアとなることが推測されたが、マルハナバチの同一個体群が生態系をまたいで季節的に垂直移動したのか、それとも各生態系で異なる個体群が活動していたのかについてはまだ明らかにできていない。しかし、このことは亜高山帯のマルハナバチ媒花植物の繁殖成功が高山帯のマルハナバチ媒花植物の開花パターンとそれに伴うマルハナバチの広域的な活動エリアの変化に影響を受ける可能性があることを示唆するものである。 ヒメハナバチ類やコハナバチ類は標高が低いほど種数、個体数ともに多かった。またヒメハナバチ類がシーズン初期、コハナバチ類がシーズン後期に多く、春と秋にハナバチ類の個体数が多くなるという季節性も標高が低いほど明瞭になる傾向があった。高山帯では雪解け傾度に沿って常にマルハナバチ媒花以外の花資源が存在するため、ハナバチ類の季節的な個体数変動は少なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高山帯のハナバチ類の行動と開花植物の関係が当初の研究課題であった。しかし、標高の低い地点の樹林帯や亜高山帯も調査地に加えることによって、ハナバチ類の広域的な分布や移動のパターンが明らかになりつつあり、ハナバチ類と植物の関係がより明確になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も過去2年間と同様の調査を継続し、高山帯の雪解け傾度に沿った植物の開花パターンとハナバチ類の訪花特性、さらには標高経度に沿った植物とハナバチ類の関係について3年間のデータを蓄積する。高山帯だけでなく、亜高山帯やブナ帯も含めた各生態系の植物群集とハナバチ類のネットワーク構造について、生態系間におけるハナバチ類の季節的な移動性を考慮に入れて解析を進める。
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