2013 Fiscal Year Annual Research Report
草食獣-植物-植食性昆虫の三者系における局所的適応進化の実証的研究
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22570019
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (20196265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正人 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (30091440)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 局所適応 / 進化 / 自然淘汰 / 被食誘導応答 / 表現型可塑性 / 遺伝的分化 / 遺伝力 / 淘汰限界 |
Research Abstract |
1.シカの採食圧によって進化したイラクサの生活史形質の抽出: 2010年に奈良公園と高取城趾のそれぞれで採取したイラクサの実生15個体を2012年まで栽培して掘り上げ,器官別に切り分けて乾燥させておいた試料について,その重量を測定した.それぞれの個体の刺毛密度については,スキャンした葉のデジタル画像をもとに測定する予定でいたが,人手が足りず断念し,2014年度に行う予定である. 2.奈良公園と高取城趾以外のイラクサの形質の測定: 2011年に奈良公園,高取城址,柳生街道,奈良女子大構内,桜井,香落渓のそれぞれからイラクサの実生15個体を採取し,栽培して掘り上げ,器官別に切り分けて乾燥させておいた試料について,その重量を測定した.また,それぞれの個体の刺毛密度を,スキャンした葉のデジタル画像をもとに測定した.統計的解析を2014年度に行う予定である. 3.形質の遺伝力の検出: 2の個体を用いて交配を行なって得た種子を播種,栽培し,掘り上げて,1と同じ形質を測定した.遺伝力の解析は2014年度に行う予定である. 4.刺毛数の被食誘導遅延応答: 刺毛数の被食誘導遅延応答があるか否かを検証するため,2011年に刺毛数の被食誘導即時応答を調べた個体をその後も継続して栽培し,2012年に引き続いて2013年にも1箇月毎にそれぞれの個体から葉4枚を採取し,刺毛数を調べた.解析は2014年に行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画した実験はおおむね達成できたが,得られたデータを解析するところまでは手が回らなかった.また,一部の試料について,人手が足りず,刺毛密度を測定することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
イラクサの刺毛密度をはじめとするいくつかの形質の遺伝力を予備的に解析したところ,有意な遺伝力が検出されなかった.予備的な解析結果とは言え,このことは解釈が非常に困難な結果であり,さらなる実験が必要なことを示唆する.ひょっとすると,奈良公園のイラクサは淘汰限界に達している可能性がある.このことを確かめるため,本年は再度,奈良公園から実生を採取し,栽培することにする.
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