Research Abstract |
本研究の目的は,矮雄をもつミョウガガイ類を対象に,矮雄の適応的意義を解明することである。このために,平成23年度は,ミョウガガイにおいて雌の成長を調査し,ヨーロッパミョウガガイの矮雄と矮雄同体間で,変態後の初期発生について比較研究をおこなった。 1.ミョウガガイにおける矮雄と雌の成長:2011年4月に,鹿児島県野間岬沖でミョウガガイ24個体を採集し,カルセイン等で生体染色し,ステンレススチールに結束バンドやボンドで付けて,現地に沈めた。2012年3月に現地に無人潜水艇を沈め,観察・回収したところ,1個体(雌)のみ再回収された。この個体は,頭状部長で2011年の57,65mmから1.2mmの成長が見られた。この遅い成長は,ミョウガガイの雌が非常に長生きするという推定を支持する証拠である。今後,殻の切片を作成し,カルセイン等の染色部位からの成長を正確に決定し,成長線が年輪に相当するのか調べる。また,定着基盤(カキ殻)に頭状部長4.49mmの小個体が定着した。これは今後室内(約12度)の水槽で飼育して,成長を追跡する。 2.ヨーロッパミョウガガイの矮雄と雌雄同体の比較:幼生の定着実験をおこなったところ,ヒドロ虫に定着した個体はすべて雌雄同体となり,雌雄同体のreceptacle上に定着した個体はすべて矮雄になった。雌雄同体になった個体と,矮雄になった個体の比は1:1と有意に異ならなかった。矮雄はreceptacle上に密集して定着し,精子間競争がおこる状況であることが確認された。一方,雄の繁殖成功を調べるためのマイクロサテライトマーカーについては,ミョウガガイで開発されたマーカーがヨーロッパミョウガガイで使用できるか検討したが,現在のところ成功していない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミョウガガイの矮雄の繁殖成功の評価については,目的をほぼ達成した。成長等のパラメーターについても,ほぼ順調に進んでいる。論文等の成果も期待以上に出ている。しかし,ヨーロッパミョウガガイで使用できるマーカーの開発がうまく行っておらず,雄の繁殖成功の評価が進んでいない。
|