2011 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖固有カワニナ類の系統進化および二次交雑が吸虫感染耐性に与える影響
Project/Area Number |
22570025
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
浦部 美佐子 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50263421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吾妻 健 高知大学, 医学部, 教授 (40117031)
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Keywords | 寄生 / 宿主特異性 / 地理的分化 / 分子系統 |
Research Abstract |
Genarchopcis goppo隠蔽種群の遺伝的・形態的研究,およびその宿主調査 昨年度までに得られた分子系統学的研究の成果を論文公表した。また,野外調査によってG.goppoとG.gigiには終宿主の分化が見られないことを明らかにし,これらは第一中間宿主であるカワニナ類との共進化によって種分化したことを示唆した。この成果は近日中に論文投稿予定である。 (2)琵琶湖産カワニナ類の分子系統学的研究 系統解析のための新たなDNA部位として、フォスファーゲンキナーゼ(Pk)遺伝子のイントロンを調べた。まず、Pk遺伝子のcDNAをクローニングし、その塩基配列を決定した。そして、その配列をもとにプライマーを設計し、ジェノミックDNAの解析を行ない、イントロンの位置と配列をしらべたところ、これまで2つのイントロン(Int1、Int4)を見出した。軟体動物ではこれまで5つのイントロンが知られている。イントロン2からは800bp、イントロンから4は300bpと800bpの2種類のバンドが観察された。今後、これらのバンドの塩基配列を調べ、集団遺伝学的に解析する予定である。 (3)交雑による遺伝子浸透の遺伝的多型への寄与 北湖産チリメンカワニナ8個体について核遺伝子ITS-1領域のサブクローニングを行い,1本鎖DNAの塩基配列の決定を行った。その結果,全部で9つのハプロタイプが検出され,その中にはカワニナと同一配列のものも存在したが,さまざまなタイプの中間型配列も出現した。このことから,琵琶湖内のカワニナ類には遺伝子浸透がみられ、さらに交雑後に組換え・変異等が生じている可能性が高いことがわかった。 さらに、通常のPCRでタテヒダカワニナとの交雑個体の可能性が高いと思われた北湖産ハベカワニナ2個体に寄生虫2種の感染実験を行ったところ,どちらの寄生虫も感染可能であることがわかった。今年度は典型的なハベカワニナの配列をもつ個体でも同様の実験を行い,比較をする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの計画のうち(1)は既に達成した。(2)および(3)に関しても、方法論は23年度でほぼ確立され,あとは分析に必要なデータ量を得るのみとなっていることから「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究に計画と変更する箇所はなく、昨年度確立された方法論に則ってさらに実験データの蓄積と解析を目指す。Pkイントロンの配列による系統解析を進めると共に,チリメンカワニナ・ハベカワニナ以外の種についても交雑由来と推測される個体をさらに検索し、サブクローニングによる遺伝子配列の解析を進めるとともに感染実験を行う予定である。
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