2010 Fiscal Year Annual Research Report
侵略的外来種アルゼンチンアリにおけるスーパーコロニーの進化と維持機構の解明
Project/Area Number |
22570031
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 真紀 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, NIESポスドクフェロー (80512590)
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Keywords | 社会性昆虫 / 外来生物 / スーパーコロニー / 遺伝子流動 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
アメリカ南東部およびカリフォルニアにおいて、アルゼンチンアリの複数のスーパーコロニーのサンプルを採集した。このサンプルに加え、日本およびヨーロッパ、オセアニアで採集したワーカーを用いてミトコンドリアDNA遺伝解析を行った結果、単一の遺伝子型に属するスーパーコロニーが世界中に分布している一方、異なる遺伝子型を持つ小規模スーパーコロニーが日本、ヨーロッパ、アメリカに分布していることが明らかになった。アメリカの小規模スーパーコロニーは同一の遺伝子型であったが、日本の小規模スーパーコロニーは異なる複数の遺伝子型を持ち、日本が侵入地の中でもっとも遺伝的多様性が高く、ごく短期間で複数回の侵入が起きていることが示唆された。また、他の侵入地ではみられない遺伝子型があることから、原産地から直接侵入した可能性も示された。 兵庫県神戸港に分布するアルゼンチンアリの4つのスーパーコロニーを対象に、ワーカー同士の敵対性レベルの季節変動を調べた結果、世界中に広く分布するスーパーコロニーの敵対性レベルの変動パターンが他のスーパーコロニーに同調する傾向がみられた。特に冬期には敵対性レベルが大きく減少した。このことから、スーパーコロニーの維持・進化のメカニズムとして特に敵対性レベルの季節変動が重要な鍵となっていることが示唆された。一方、マイクロサテライト遺伝子座の対立遺伝子頻度に基づく集団遺伝解析を行った結果、4つのスーパーコロニーは遺伝的に独立しており、隣接するスーパーコロニー間でも遺伝子流動は低頻度でしか起きていないことが明らかになった。これらの結果から、アルゼンチンアリは安定した環境下ではスーパーコロニーの個体群構造は容易に変化しない可能性が示された。
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Research Products
(4 results)