2011 Fiscal Year Annual Research Report
侵略的外来種アルゼンチンアリにおけるスーパーコロニーの進化と維持機構の解明
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22570031
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 真紀 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (80512590)
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Keywords | 社会性昆虫 / 外来生物 / スーパーコロニー / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
2010年10月にアメリカで採集したワーカーのミトコンドリアDNA COI、COIIおよびcytochrome b領域の解析を実施し、これまで採集した日本および他の侵入地域の配列データを用いて最節約系統樹を作成した。その結果、6つのハプロタイプがみつかり、内5つのハプロタイプを日本の侵入個体群が有することが明らかになった。1つのハプロタイプは、日本、ヨーロッパ、北米、オーストラリア、ニュージーランドと広く世界中に分布する集団が共有していた。2目のハプロタイプは、日本(Kobe B)および北米の複数のスーパーコロニーが共有していた。 2011年6月に兵庫県神戸市において、4つのスーパーコロニー(Kobe A、Kobe B、Kobe C、Japanese main)採集した。これらのコロニーを用いて、ワーカー同士6ペアの敵対性試験を3回実施し、逃避行動の回数を計数するとともに、ワーカー同士1つのスーパーコロニーから10個体、対するスーパーコロニーから1個体を敵対させて集団敵対行動を観察した。その結果、Kobe Cが有意に他コロニーに対して逃避行動をとった(T test,P<0.05)。一方、集団敵対行動では、敵対性レベルはいずれの組み合わせでも高かったが、行動に違いがみられた。10個体の抽出がJapanese mainとKobe Bの場合、他コロニーの1個体に対して、複数のワーカーが攻撃を行ったのに対して、Kobe AとKobe Cでは、戦う個体以外は避ける傾向があった。 以上の結果から、局所分布する小規模スーパーコロニーKobe Cが逃避する傾向にあり、巨大スーパーコロニーを形成するJapanese mainとKobe Bが攻撃的であることが明らかとなった。このことから巨大スーパーコロニーの形成メカニズムとして、優占するスーパーコロニーが他のスーパーコロニーを駆逐し広域に分布を拡大したことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゼンチンアリの巨大スーパーコロニーの形成メカニズムについて、攻撃力の強さが寄与していることが推測された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、攻撃力の強さの定量的評価を実施するとともに、競争力の強さにつても研究を実施する。
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Research Products
(5 results)