2011 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化が沿岸性魚類の繁殖に及ぼす影響―データの集積と予測モデルの確立
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22570032
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
川瀬 裕司 千葉県立中央博物館, 分館海の博物館, 上席研究員 (10270620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須之部 友基 東京海洋大学, 水圏科学フィールド教育研究センター, 准教授 (00250142)
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Keywords | 魚類 / 繁殖行動 / 産卵 / 海水温上昇 / 生物多様性 / データベース / モニタリング |
Research Abstract |
地球温暖化による海水温の上昇が沿岸性魚類の繁殖に及ぼす影響を解明するため,過去から現在までの繁殖記録をデータベース化して繁殖期の変化を明らかにするとともに,将来の繁殖期の変化を予測することを目的とする.平成23年度は,千葉県勝浦・館山,東京都八丈島,静岡県富戸,高知県柏島,鹿児島県屋久島の合計6カ所の観察区でスズメダイ科魚類を中心とした潜水観察を行うとともに,繁殖記録のデータベース化を行った. 現在継続中の潜水観察および過去の観察記録により,およそ3000件の魚類繁殖記録のデータベース化を達成した.その中でいちばんデータの多い八丈島からは,スズメダイ科魚類で7属23種の繁殖が確認された.これは,これまでに八丈島から記録されたスズメダイ科魚類の56%に相当した. スズメダイ科魚類の多くの種では,春から秋にかけて繁殖行動が観察された.繁殖終了時の水温は繁殖開始時より高く,繁殖の継続期間は水温以外の要因によって決定されていることが示唆された.一方,水温が低くなる秋以降を中心に繁殖する種も少数確認された.アマミスズメダイは水温およそ19~24℃で繁殖し,八丈島では水温が高い年に限り冬季も産卵行動が観察された.また,キホシスズメダイは水温条件によってはほぼ年間を通して繁殖することが確認された.地域間で比較すると,クマノミでは高緯度地域ほど繁殖開始時期が遅れる傾向が見られた.これに対して,繁殖終了時期には著しい差は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6カ所の観察区でのフィールド観察および,各地点における過去の繁殖記録のデータベース化,解析作業は概ね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の今年度は,これまでに得られた沿岸性魚類の繁殖記録データベースの一般公開の準備を行う.また,研究者のみならず一般ダイバーからもインターネット経由で繁殖記録を幅広く募集して,全国各地から様々な時期の観察データを収集・解析・公開できるシステムを構築していきたい.
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Research Products
(4 results)