2010 Fiscal Year Annual Research Report
苔類ゼニゴケを用いた植物ストレス応答の進化生理学的研究
Project/Area Number |
22570035
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
竹澤 大輔 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20281834)
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Keywords | アブシジン酸 / 苔類 / ストレス耐性 / プロモーター / PP2C |
Research Abstract |
アブシジン酸(ABA)は、高等植物の種子休眠や気孔の開閉、凍結・乾燥ストレス耐性の発現に関わるホルモンとして知られている。ABAはシダ植物や、蘇類などの非維管束植物においてもストレス耐性の発現に関わることが示唆されているが陸上植物の進化の初期に生じたグループである苔類に対するABAの作用は明確に明らかにされていない。本研究ではモデル植物である苔類ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)を用いて、苔類のABA応答の分子機構を解析することを目的とした。ABAのゼニゴケに対する作用を調べたところ、ABAが1μM以下の濃度でゼニゴケ無性芽の成長を抑制する効果があることが明らかとなった。ABA応答性のコムギEmプロモーターに結合したGUSレポーター遺伝子(Em-GUS)をゼニゴケ培養細胞に導入したところ、ABAはEm-GUSの発現を増大させた。ABA応答性のEm-GUSの発現は、Emプロモーター内のABA応答配列(ABRE)とRY配列を部位特異的変異により破壊することによって消失した。このことから、これらの保存されたシス配列がABA応答に重要であることが示唆された。ゼニゴケ培養細胞におけるEm-GUSのABA誘導的発現は、ゼニゴケから単離したシロイヌナズナABI1オーソログMpABI1遺伝子を共発現させることで消失した。MpABI1を過剰発現するヒメツリガネゴケ原糸体細胞は、ABA処理による凍結および浸透圧ショックに対する耐性を獲得できなかった(Tougane et al. 2010)。これらの結果から、高等植物と同様のプロテインホスファターゼ2Cを介したABA応答性遺伝子発現の分子機構が苔類にも存在することが明らかとなった。
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