2011 Fiscal Year Annual Research Report
mRNA代謝制御因子SAP130の植物形態形成における制御機構
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22570041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柘植 知彦 京都大学, 化学研究所, 助教 (50291076)
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Keywords | 植物形態形成 / mRNA代謝制御 / タンパク質分解制御 / 花粉形成 / 遺伝子発現 / 転写 / スプライソソーム / タンパク質相互作用 |
Research Abstract |
SAP130は、mRNA代謝に関わるSF3b、転写制御に関わるSTAGAやTFTC、タンパク質分解制御に関わるCRL型E3やCSNなどのタンパク質複合体に同定され、その機能は多岐にわたる。本研究では、SAP130がその結合相手に依存した機能『モード』が使い分けるものと考え、各モードでSAP130が担う制御機構と、そのターゲット遺伝子群の解明を目的とする,以下に研究成果を列記する。 (1)SAP130機能は未知な点が多いので、植物を材料にその理解を目指した解析を行なった.シロイヌナズナに2コヒー存在するSAPI30の発現を同時に抑制する植物は、光感受性が高まり、不稔形質を示したこの植物は配偶子形成に異常を示し、花粉の形態形成に着目した解剖学的解析の結果、microspore期からbicellular期への移行期に異常を示す。この結果は、SAP130のプロモーター活性が高い時期と器官と一致することから、SAP130が正常な花粉形成に不可欠であると判明した。 (2)上記の花粉異常が生じる時期は、花粉に大量のmRNAが蓄積し、柱頭で発芽する時に転写を伴わない翻訳を効率的に行なう準備期にあたる。SAP130のターゲット探索の結果、これまでQRT1とQRT3の発現量がSAPI30発現抑制植物で野生型植物に比べて低いことが判明した。これら転写産物の制御がどのSAP130『モード』に依存するのか、動態と合わせた解析を進めている。 (3)SAP130と結合するCSN1の部分相補変異植物には、不稔形質を示すものがあることが判明した。この原因解析を進めたところ、花粉の生存率に異常が認められた、現在この植物の解剖学的解析を進め、CSN1とSAP130の直接結合に起因するSAP130『モード』の解明を進めている。 上記成果の一部は、国内外の学会と国際雑誌に査読付き論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究が進展し、確実に成果を上げている。さらに、CSN1部分相補変異植物とSAP130発現抑制植物とに共通する形態異常の発見や、植物にのみ存在するSAP130類似タンバク質の発見など、当初予想していなかった研究材料を獲得して、今後さらに効率的で相補的な研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
SAP130が花粉形成に担う機能『モード』の分子メカニズム解明を目指し、以下3点に焦点を絞る。 1)SAP130遺伝子のin planta機能解析:選択的な遺伝子発現抑制機構の分子機構を解明するために、SAP130の発現・抑制を器官特異的に誘導できる植物を解析する。また、SAP130抗体や標識タンパク質を活用し、動態と機能『モード』における制御機構を解明する、2)SAP130制御の分子メカニズム:花粉形成に関わる遺伝子群をモデルに、特にQRTIとQRT3遺伝子の転写産物の代謝や安定性に着目して解析を進める。3)SAP130制御機構におけるCSNの役割:SAP130-CSN1結合部位の決定を目指し、理化学研究所バイオ解析チームと共同研究のもと、両タンパク質の結晶構造解析を進めている,SAP130とCSN1の結合に特異的に関わるアミノ酸または領域に変異を入れた植物を作製して、SAP130-CSN1結合が担う生物学的意味を解明する。
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Research Products
(11 results)