2011 Fiscal Year Annual Research Report
プリン分解代謝の二元的な植物生理機能の解明とその制御に関する研究
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22570043
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂本 敦 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60270477)
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Keywords | プリン代謝 / キサンチン脱水素酵素 / 窒素リサイクル / 尿酸オキシダーゼ / 植物 / ストレス適応 / イネ |
Research Abstract |
環境変動に即したプリン分解代謝の二元的な植物生理機能(通常条件下での成長維持,ストレス下での環境適応)を実証し,その制御機構を解明することを目的に研究を進め,以下の結果を得た。 1.窒素栄養の再利用代謝として機能の実証 プリン分解の普遍的重要性を明らかにするために,単子葉モデル植物であるイネを対象として代謝の初発酵素XDHをノックダウンした形質転換植物を作出した。得られた形質転換イネ当代の成長量や種子稔性は通常栽培条件でも野生株と比較して顕著に低下したことから,プリン分解は双子葉植物のみならず単子葉植物においても成長や生産性に影響を与える重要代謝であることが示された。 2.環境適応代謝として機能の実証 多段階の酵素反応からなるプリン分解系のどのステップが環境適応に枢要な役割を担うのかを評価するために,次発酵素UOX以降について一反応ずつ代謝欠損を持つ3つの異なるシロイヌナズナ遺伝子破壊株を単離した。まず,UOX欠損の生理学的影響を解析した結果,遺伝子破壊株は乾燥条件で高い水分損失を示したことから,UOX以降の代謝ステップが環境適応に実質的に関与することが示唆された。 3.プリン分解代謝の二元的な機能発現を可能とする遺伝子ネットワークの存在証明 プリン分解系の転写制御に連関する因子の探索を企図し,シロイヌナズナの公開アレイデータの共発現解析から,初発酵素XDHと次発酵素UOXに対して高い発現相関を示す転写因子様蛋白質遺伝子PHL1を見出した。タマネギ表皮細胞におけるGFP融合蛋白質の一過的発現解析から,PHL1は核に局在することが示された。次にPHL1の機能解析のために遺伝子破壊株の単離を試みたが,変異遺伝子のホモ接合系統は胚性致死であることが示唆されたため,現在,PHL1がXDHやUOXのプロモーターを活性化できるかどうかをシロイヌナズナの一過性発現系で調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双子葉や単子葉を問わずプリン分解が植物の成長や生産性に重要な代謝であることが示されたため,また環境適応代謝系としての機能解析に必要なプリン分解酵素の段階的機能欠損株も複数単離され,システマティックにストレス生理学的解析が行える準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
全体計画の中で,遺伝子ネットワークの解析がやや遅れているため,ネットワークの鍵となる転写因子候補の範囲をもう少し広めて,遺伝子破壊,過剰発現のほかに一過性発現系におけるトランスアクチベーションなどの手法駆使し,その同定に結びつけたい。
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Research Products
(6 results)