2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22570050
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
杉浦 昌弘 名古屋市立大学, 大学院・システム自然科学研究科, 名誉教授 (80027044)
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Keywords | 葉緑体 / 翻訳 / mRNA / in vitro系 / タバコ / 重複遺伝子 |
Research Abstract |
葉緑体のNADH脱水素酵素の2種のサブユニットをコードするタバコ葉緑体のndhCとndhKのシストロンは、一部重複している。一般的には下流のシストロンの翻訳は上流シストロンに比べ極めて低いので、ndhKの翻訳が低いと想定される。 mdhC/ndhK mRNAを、われわれが開発したin vitro系で翻訳したところ、意外にもNdhCサブユニットとNdhKサブユニットが等量合成された。上流のndhCの終止コドンを除くと下流のndhKの翻訳は起きないこと、更に、上流の5'UTRとそれに続くAUG開始コドンを除いてndhCの翻訳を止めても、ndhKがかなり翻訳されることを最近発見した。この知見から、ndhKシストロンは二つの機構で翻訳されるとする『1シストロン2翻訳機構』仮説を立てた。本研究では、この仮説の基づく新しい第2の機構の分子機構を、我々の葉緑体in vitro翻訳系を用いて明らかにする。 本年度は、緑色蛍光タンパク質コード領域(GFP)を翻訳活性の指標とした解析を行い、以下の進捗があった。 1)ndhCシストロン(360nt)の中心部の更なる欠失実験から、リボソームの入口の配列をおよそ20ヌクレオチドに絞り込んだ。 2)上の必須領域のすぐ下流にndhCシストロンと同じフレームのAUGが1個あり、このAUGからリボソームが翻訳しながら進んでいくと考えられる。 3)ndhK開始コドン直前の必須領域に存在するShine-Dalgarno(SD)様配列に変異を導入するとndhKの翻訳が影響を受けることから、この配列がシス配列であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ndhKシストロンは二つの機構で翻訳されるとする『1シストロン2翻訳機構』仮説のうち、他には例を見ない新しい第2の機構の分子機構を、我々の葉緑体in vitro翻訳系を用いて明らかにすることが本研究の目的であるが、これまでに、2つの必須領域を同定しており、両者はリボソームの入り口と翻訳再開始のシス配列を含んでいると考えられる。これまでの期間にこのような成果を得たことで目標は十分に達成できており、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は、主に、蛍光標識リジンtRNAを用いて、必須領域内にあるndhCシストロンと同フレームのAUGからの翻訳産物の検出を行い、リボソームが翻訳しながら進むかあるいはスキャンしているだけなのかを明らかにする。同時にこのAUGからの翻訳とndhKの翻訳の比率を確認する。 また、本年は最終年度であるのでこれまでの解析結果をまとめ論文として成果を発表する。
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