2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経葉ホルモンの脳-行動制御機能の解析:広塩性両生魚と雄性胎生魚からの新しい展開
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22570065
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 竜哉 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10294480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 浩隆 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (20363971)
御輿 真穂 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (00527997)
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Keywords | バソトシン / イソトシン / トビハゼ / 環境 / 神経行動 / 脳 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
まず、脳における神経葉ホルモンの発現と攻撃行動との関連を調べた。トビハゼのバソトシンとイソトシンの前駆体cDNAの塩基配列を決定し、その配列を基にreal-time PCRによりこれらのmRNA量を定量化した。1匹分の陸上を設置した1/3海水の水槽中にオス2匹を入れた後、1時間の行動を観察した。攻撃行動のパラメーターとして、威嚇のための背鰭の拡張、開口、場所取り、追いかけ、噛みつき、体当たりの回数をカウントした。これらのパラメーターの合計が多い方を優位個体とし、少ない方を劣位個体とした。バソトシンmRNA量は、優位個体よりも劣位個体が130%高かった。一方、イソトシンの発現量には有意差はなかった。トビハゼにおいても、攻撃行動にバソトシンが関与していることが示された。 次に、陸上適応にともなう神経葉ホルモンの発現を調べた。トビハゼを陸上に移行すると、体液浸透圧の上昇に伴い、バソトシンmRNA量は350%、イソトシンmRNA量は140%まで増加することを明らかにした。さらに、トビハゼの脳室内へ神経葉ホルモンを投与し、水陸選択への効果を調べた。バソトシンもイソトシンも、1時間後には投与量に依存して水中での時間を延長し、水中への移動回数が減少した。すなわち水中にとどまらせた。これらの効果は、投与してから8時間後まで持続した。雌雄で差は見られなかった。また、イソトシン受容体のアンタゴニストを同時に投与すると、バソトシンとイソトシンのいずれの作用も抑制された。よって、この水陸選択行動にはバソトシンも結合するイソトシン受容体が重要だと思われる。 以上の結果を併せると、攻撃性が劣るトビハゼで誘導されているバソトシンは、脳内のイソトシン受容体を介し、水中への逃避を惹起しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨウジウオを用いた解析は行わなかったが、トビハゼにおいて、攻撃行動と体液調節における作用の関連を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
脊椎動物を超え、無脊椎動物における検討も行う。
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