2011 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の加齢と連合学習の獲得に関する分子基盤と神経基盤の結合的解析
Project/Area Number |
22570071
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
松浦 哲也 岩手大学, 工学部, 准教授 (30361041)
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Keywords | 線虫 / 電気生理学的計測 / 学習 / 成長・加齢 |
Research Abstract |
線虫(Caenorhabditis elegans)は、全てのニューロンの系譜や位置関係、神経回路網が明らかにされている。そのため、行動やそれを制御する神経系、さらには遺伝子との関連性を結びつけることのできる数少ないモデル生物の一つである。動物行動を支配する分子基盤は遺伝子であるが、線虫の発現行動を直接制御している神経系についてはほとんど知見が得られていない。その理由は、線虫の体長とニューロンの小ささにあり、技術的な困難をともなうためである。申請研究では、技術的な問題をクリアしながら、連合学習獲得における神経基盤の解明およびその加齢変化を電気生理学的に解明することを目的としている。具体的には、揮発性誘引物質ジアセチルとエサの有無を関連付けた連合学習に関与するニューロン群を決定し、候補ニューロンに蛍光マーカーGFPを発現させ、電気生理学的解析により学習関連ニューロンの同定を行う。今年度は昨年度からの継続課題の解決、ターゲットとするニューロンからの電気生理学的解析に着手した。 昨年度からの継続課題として、ガラス管微小電極の細胞内への挿入および当研究室で開発した細胞内記録が可能な金属電極によりニューロン活動の記録を試みた。その結果、確率的には少ないが特定ニューロンからの自発発火の記録を得ることができた。しかし、安定したデータを得るには至っていない。現在は、電極挿入方法を最重点課題として検討を進めている。また、忌避物質ノナノンと誘引物質ジアセチルの間に物質間相互作用が存在することを発見し、新たな学習実験の構築に成功した。ノナノンを感知するのはAWB感覚ニューロンであるが、このニューロンに蛍光タンパク質GFPを発現させた変異体がすでに存在する。この変異体を入手し、匂い-エサ連合学習獲得後のGFP発現AWBニューロンをターゲットとして活動記録および解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請研究の最大の意義は、技術的に困難であるとされてきた線虫ニューロンから電気活動を記録することである。しかし、当初の予想を超えた技術的な壁が存在し、その解決に全力を注いでいる。また、研究以外(学内や学外の行事)の部分で時間をとられることが多く、研究に対して十分な時間確保が難しかったことも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)研究時間の確保:大学教員として学内運営や社会貢献に携わることの必要性は年々増大している。そのような状況下において、研究のための時間を十分に確保することは難しいが、これまで以上に時間の有効利用を考え、研究課題の推進を図りたいと考えている。 (2)技術的課題:線虫ニューロンから細胞内記録を行うことの困難さは承知しており、その解決にむけて様々な工夫を行っている。海外では1研究室のみが成功しており、海外研修も視野にいれながら、この問題の解決を図りたい。停滞しているが、必ず成功するものと確信している。 (3)変異体株の作成:変異体株の分離は次年度以降に行う。この分野に長けた研究者のアドバイスを受けながら、RNA干渉法を用いた変異体の分離や分子生物学的な解析を行いたい。
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