2013 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫を用いた行動と神経系の可塑的性質についての研究
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22570074
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加納 正道 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (80183276)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コオロギ / 空気流感覚 / 尾葉 / 逃避行動 / 行動補償 / 可塑的性質 / 巨大介在神経 |
Research Abstract |
これまでの研究では、片側尾葉切除後のコオロギを固定し、その静止歩行に同期させて人工の空気流刺激(偽自己刺激空気流)を与えることにより、空気流刺激に対する逃避方向に補償的回復が生じること、また、その際に偽自己刺激空気流のタイミング(遅延)と持続時間はトレード可能なパラメータとして、行動補償の程度に影響することを行動学的に明らかにしてきた。さらに、偽自己刺激空気流の流速も第3のパラメータとしてこの行動補償に影響することも明らかにしてきた。 今年度は、偽自己刺激空気流の流速の影響をより確かなものにするため、これまでよりも遅い流速の空気流を用いて行動補償の発現を調査した。用いた空気流は流速15 mm/secであり、最初の実験(30mm/sec)の半分である。遅延は500msecのみを用いたが、持続時間は100 msec、150 msecおよび200 msecと変化させた。その結果、持続時間が100 msecおよび150 msecの刺激では補償的回復は生じなかったが、200 msecにおいては回復が見られた。すなわち、流速を遅くすることにより、回復を生じさせることのできる持続時間の範囲が長い方向へシフトしたことから、これまでの結果と整合性のある結果が得られた。このことにより、今年度に発表した論文(Zoological Science, 30: 339-344, 2013)において提唱した行動補償の神経メカニズムにおける仮説の妥当性が、より確かなものとなった。また、今年度は行動補償に関係するであろう神経系の検索にも着手した。行動補償の仮説においては、遠心性コピーシグナルが重要な役割を果たすと考えられているが、その考えに従い、コオロギの歩行中に遠心性コピーと考えられる神経活動を記録に成功した。解析はまだ初期の段階であるが、仮説に従い遠心性コピーの候補として適当かどうか検証を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画に沿って進められ、各年度とも今後の研究の進展を期待できるような新しい知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、これまでに歩行に伴って記録された下行性の神経の活動が遠心性コピーシグナルそのものであるかどうかの検討も含めて、主として遠心性コピーシグナルを担っていると考えられる介在神経の検索を行う。このような活動を示す介在神経からの記録は非常に難しいため、まず細胞外記録法を用いての記録を行う。歩行に伴い生じる当該介在神経の反応量を何らかの方法で定量化し、主に歩行速度との関係を明らかにすることにより、遠心性コピーシグナルとして妥当か否かの判定を行う。研究の進展の程度によっては、細胞内記録を行い、遠心性コピーシグナルを担っている特定の介在神経の同定を目指す。このような介在神経の特定を手がかりにして、行動補償に関係する神経動作を電気生理学的手法を用いて順次調査していくことにより、行動補償の神経基盤を明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)