2011 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の湿度感覚に関わる前大脳高次情報処理についての生理学的形態学的研究
Project/Area Number |
22570080
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
横張 文男 福岡大学, 理学部, 教授 (20117287)
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Keywords | 昆虫 / 湿度情報処理 / 中枢神経系 / 温度感覚 / 湿度感覚 / 触角葉 / 触角葉糸球体 / 触角感覚子 |
Research Abstract |
平成23年度までの研究においてワモンゴキブリ前大脳にはいくつかの温度・湿度刺激に応答する同定可能ニューロンがあることがわかった。触角葉の出力ニューロンには多くの糸球体から入力を受けるマルチモーダルな出力ニューロンは湿度応答を示し、その応答パターンは匂い刺激に対する応答パターンとは異なる傾向が見られた。また、キノコ体出力ニューロンには明瞭な湿度応答を示すものもあったが、それらのニューロンの応答様式と形態的特徴をもとに分類するまでには至らなかった。23年度の研究では、もう一度原点に戻って、先ず触角葉糸球体の詳細な分布図を作成すると同時に、触角上感覚子の嗅受容ニューロンの軸索投射先である糸球体と湿度受容ニューロンの軸索投射先である糸球体との場所的関係を調べ、糸球体からの前大脳への投射ニューロンの投射先との関係を調べた。その結果、次のことが明らかになった。ワモンゴキブリでは触角神経が2本あるが、その2本の触角神経は触角葉では分枝するので、それぞれの分枝と糸球体との関係に注目しながら、触角葉糸球体地図を試みた結果、糸球体の数は雌雄とも同数で約205個であった。雄には性フェロモン受容ニューロンが投射する大糸球体複合体があるが、雌においても雄の大糸球体複合体と同位置に対応する糸球体があった。このように糸球体の数においては性的な違いはなかった。そのほかの糸球体においても位置に大きな個体差はなく、全糸球体の地図を作成することができた。これは今後の研究を進める上で重要な知見となる。更に、各糸球体に投射する触角感覚子の受容ニューロンとも関係を調べるために、触角感覚子から蛍光染料を取り込ませた。その結果、湿度・温度受容ニューロンだけでなく一部の嗅受容ニューロンと糸球体との関係も明らかになってきた。これは今後更に研究を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、昆虫の湿度感覚に関わる前大脳高次情報処理について明らかにすることを目指す研究であるが、湿度刺激に応答する前大脳のニューロンは湿度刺激だけに応答するものは少数で、マルチモーダルなものが多い。そのため本研究では原点に戻って触角葉糸球体とその投射ニューロンとの関係を見直す必要が生じたため、そのために研究に多くの時間を割かざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに研究で明らかにした触角葉全体の糸球体地図上に各糸球体が処理する匂い情報の種類および湿度・温度情報を対応させる。前大脳の側葉とキノコ体を結ぶニューロンおよびキノコ体の出力性のニューロンのうち、湿度変化の応答するニューロンについて細胞内記録法と細胞内染色法を併用して、その神経回路の解明を目指す。
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