2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島における冷水性淡水魚類群集の成立過程と保全:生息地予測と系統地理の統合
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22570082
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
横山 良太 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所・内水面研究部, 研究等支援職員 (40532403)
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Keywords | 系統地理 / 生息地予測 / 保全生物学 |
Research Abstract |
系統地理解析と生息適地予測モデルを統合し,温帯域に生息する冷水性淡水魚類群集の成立過程を明らかにするとともに,気候変動(温暖化)によって深刻な影響を受ける冷水性種の保全単位ごとの絶滅リスク推定を行うことを目的に,本年度は以下の項目について研究を実施した. I.GISデータマイニングと冷水性淡水魚類の生息適地予測モデル構築 現在の気候データに基づく生息適地予測モデルをもとに,シミュレーションで復元・予測された過去および未来の気候データを用いて,フクドジョウについて過去および未来の生息適地予測モデルを構築することができた.とくに,現在と未来(温暖化予測)おける生息適地面積の変動を定量化したところ,冷水性淡水魚フクドジョウの未来の生息適地は著しく減少し,さらに減少の度合いには地域的な偏りがあることが予測された.このことから,温暖化予測のもとでは,広域に分布する本種においても生息地域の消失と固有系統の絶滅が危惧されることが示唆された. II.生息適地予測と系統地理を統合する解析手法の確立 フクドジョウについて,得られた生息適地予測モデルにおける各グリッドの生息確率を伝導度とみなし,電子回路理論(Circuit theory)に基づいて生息適地間の景観上の結びつきの程度(habitat connectivity)を定量化した.モデルから求めたhabitat connectivityと遺伝データから求めた実際の遺伝子流動量の間には有意な正の相関が見られた.このことから,生息適地予測モデルとそれに基づく集団構造モデルは,実際の魚類の分布および遺伝的集団構造についての良い予測を与えるものと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去・現在・未来という各時間軸における冷水性淡水魚類の生息適地予測モデルの構築,および生息適地予測モデルから生物の移動分散モデルを推定することが可能になった.系統地理解析もフクドジョウは完成し,他の種も既報をもとに解析できている.幾つかの種では,分布データの集計に困難があり,生息適地予測モデルの構築が未了となっているが,全体としてはおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
I 複数種の生息適地予測モデルの構築と系統地理解析との統合 比較可能な複数種について生息適地予測モデルを完成させる.また,habitat connectivityと遺伝子流動の相関だけではなく,それ以外の検証方法を試していく. II 温暖化予測のもとでの生息適地予測モデル構築と遺伝的集団構造の変動予測 様々なシチリオに基づく未来の気候データをもちいて,未来の生息適地予測モデルを構築する.系統地理解析で見出された種内系統ごとに生息適地面積の変動と,それに伴う遺伝的集団構造の変動を定量化し,各系統の絶滅リスクを求める. III 研究の総括 研究の成果は,日本魚類学会および日本生態学会にて発表するとともに論文として公表する.
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