2010 Fiscal Year Annual Research Report
緑藻アオサ・アオノリ類の種分類と種分化に寄与した環境適応分子進化に関する解析
Project/Area Number |
22570086
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
嶌田 智 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (40322854)
|
Keywords | 種分類 / 種分化 / 緑藻 / アオサ |
Research Abstract |
本研究では,緑藻アオサ属藻類に注目し,様々なレベルの「種」に関する問題解決に挑戦している。まずは正確な種多様性の認識に向けて研究を行った。予備実験でアオサ属藻類の種多様性が高いと指摘された沖縄での調査の結果,Ulva sp.2とされていたものが分子系統解析および形態学的観察で種としての独立性が支持された。関東近海でも種多様性解析を開始し,八重咲きのような外部形態のボタンアオサを詳細に調査した。これまでアナアオサやミナミアオサが潮間帯上部に生育する場合にみられる生育形のひとつとする見解があり,ボタンアオサという種の存在が疑問視されていた。ボタンアオサ様藻体を網羅的に分子系統解析にかけた結果,アナアオサ,ミナミアオサ,リボンアオサ,ヒメボタンアオサおよび新規配列の5つのクレードに分かれた。新規配列を示した証拠標本には,岡村が報告したボタンアオサの特徴:2層膜状を構成する細胞の大きさが異なることが確かめられ,ボタンアオサの種としての独立性が示唆された。 海産ウスバアオノリと汽水産スジアオノリの近縁性に関する研究で,チンタオで大増殖を引き起こした株を確立し,これら3株をもとに,分子系統解析,形態比較および交雑実験を行った。系統的には,ウスバアオノリからスジアオノリ,スジアオノリからチンタオ株が進化したと示唆され,海水→汽水→海水の順で適応進化が起こったと考えられた。形態的には,同一条件で培養したところ,チンタオ株が最も分枝頻度が高くなり,形態的差異が遺伝的に固定されていた。これら3株は片方交雑が見られ,ごく最近分化したことが示唆された。 淡水産種ウムトゥチュタノリを海水培養藻体および淡水培養藻体で発現している遺伝子を比較し,subtraction法を用いて淡水培養藻体で特異的に発現が上昇している39遺伝子を単離した。
|
Research Products
(2 results)