2011 Fiscal Year Annual Research Report
緑藻アオサ・アオノリ類の種分類と種分化に寄与した環境適応分子進化に関する解析
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22570086
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
嶌田 智 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (40322854)
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Keywords | 種分類 / 種分化 / 緑藻 / アオサ / マイクロサテライト / RNAseq |
Research Abstract |
本研究では,緑藻アオサ属藻類に注目し,様々なレベルの「種」に関する問題解決に挑戦している。昨年度の研究成果として,沖縄産未記載種Ulva sp.2は,ミナミアオノリUlva meridinalis Horimoto et Shimada sp.nov.として新種記載した論文が受理された。また,淡水産種ウムトゥチュタノリを海水培養藻体および淡水培養藻体で発現している遺伝子を比較し,subtraction法を用いて淡水培養藻体で特異的に発現が上昇している39遺伝子を単離し,リアルタイムPCRにおいて,これら遺伝子の海水から淡水に移行させてときの発現量を定量的に調査した結果をまとめた論文が受理された。さらに,チンタオ株,海産ウスバアオノリおよび汽水産スジアオノリの分子系統解析,形態比較および交雑実験により,これら3株の近縁性と遺伝的分化に関する結果をまとめた論文が受理された。 上述のように,海産ウスバアオノリおよび汽水産スジアオノリは形態的に異なり別種として認められているが,実験室内の交雑実験では片方交雑が確認されている。これら2種が自然界で交雑しているのか,マイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝構造解析を行った。マイクロサテライトマーカーを7つ開発した。その結果,いくつかのマーカーで,海産ウスバアオノリ有性生殖個体群(北海道忍路)および汽水産スジアオノリ有性生殖個体群(北海道信砂川)で,共通するアレルが複数検出され,自然界でも交雑が起こっていることが示唆された。 さらに新規に,比較RNAseq解析を始めた。海産ウスバアオノリおよび汽水産スジアオノリを海水,汽水,淡水で培養した株(合計6株)をもとに合計14GbのRNAseqデータを得て,約6万コンティグを決定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較RNAseq解析も順調に進んでいるが,アグルチニンに関する調査が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
比較RNAseq解析を中心に行っていく。生命情報学的解析が必要となるが,これに関しては新たにお茶の水女子大学アカデミックプロダクション・小倉准教授にご教授いただく。さらに,比較RNAseq解析に関してはたとえば低塩濃度耐性に関与する候補遺伝子が単離されるわけだが,これらの遺伝子の機能に関しては組換え体の作出が必要になる。これに関しては新たに東京大学新学術領域・河野重行教授との共同研究で,研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(4 results)