2011 Fiscal Year Annual Research Report
大陸辺縁部における遺伝的多様性の解析:家畜化プロセスの解明をめざして
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22570087
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松村 秀一 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30273535)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 家畜 / 日本犬 / 日本在来馬 |
Research Abstract |
本研究は、家畜化当初の古い特徴を遺伝的に保持している可能性がある日本在来家畜種、特にイヌ・ネコ・ウマに焦点をあて、遺伝的多様性の分析を通じて家畜化の過程を解明することを目的とする。本年度は、以下のような項目に重点的に取り組んだ。 (1)遺伝的サンプルの収集 イヌ・ネコについては、前年度の試料を補完するサンプル収集をおこなった。ウマについては、共同研究として、対州馬に関するサンプル収集に協力し、ほぼ全頭の試料を集めることができた。 (2)DNA多型の解析 イヌ、ウマについて、日本在来品種とそれ以外の品種の比較を念頭に、DNAの多型解析を進めた。具体的に対象としたのは、ミトコンドリアDNA、マイクロサテライトDNA、および毛色、味覚、嗅覚、ストレス耐性に関する遺伝子である。対州馬についての共同研究に関しては、遺伝的多様性の度合い、遺伝的構造および木曽馬との関係に関して、予備的な結果を得た。また、ドイツの共同研究者と協力し、世界的な視野からみたウマのDNA多型解析を進めた。 (3)DNA資料の統計学的解析・集団遺伝学的シミュレーション イヌについては、既に出版されているイヌ・オオカミの遺伝的データと合わせて遺伝的解析をおこない、系統関係、分岐年代、日本への渡来時期などについて結果を得た。現在投稿準備中である。 この他、自然選択・人為選択の強さを適切に評価し、種間比較をおこなう方法に関する理論研究を進め、その成果を学術雑誌に投稿中である。さらに、比較研究として、家畜以外の動物の渡来時期と渡来数に関するシミュレーション研究をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イヌやウマについての共同研究が進行し、日本在来品種の特徴や祖先種との関係について、興味深い知見が得られ始めている。DNA多型の度合いが明らかにされるだけでなく、統計解析により、そこから個体群の過去に関する情報が引き出されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
試料収集・分析がやや遅れているネコについて、相対的に力を注ぐことにより、バランスのとれた研究の進行をめざす。最終年度を迎えるにあたり、不足している試料の収集や分析を進めるのは当然であるが、それと同時に、成果の発表につとめる。
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