2010 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯島嶼域におけるハナミョウガ属(ショウガ科)の送粉・交配システムに関する研究
Project/Area Number |
22570095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 准教授 (50284948)
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Keywords | ハナミョウガ属 / 送粉機構 / 両掛け戦略 / ショウガ科 |
Research Abstract |
本年度は琉球大学構内に調査区域を設定し、ゲットウの開花個体数の季節変化を調査すると共に、cata-型とana-型それぞれから複数個体を選び、個体毎の開花期間、花序数、花序当たりの開花数を調査した。その結果、cata-型とana-型の個体間に開花時期のずれなどは確認されなかった。また、開花から閉花までの個々の花の花蜜分泌パターンを調査し、午前と午後のピークと共に、予備実験でも確認された夜間における蜜分泌が確認された。訪花昆虫についても、沖縄島、西表島、南大東島を中心に、24時間調査を含む合計100時間以上の調査をおこない、昆虫綱の6目11科20分類群、クモ目の1科1種、軟体動物門・腹足綱柄目目の2科3種の訪花を確認した。これらの中には、夜間を中心に行動するスズメガ科の5種(イッポンセスジスズメTheretra silhetensis silhetensis、シタベニセスジスズメHippotion celerio、コシタベニスズメHippotion boerhaviae、エビガラスズメAgrius convolvuli、ホシホウジャクMacroglossum pyrrhosticta)が含まれており、夜間における花蜜の分泌と合わせ、ゲットウが昼行性と夜行性の花粉媒介者を利用している可能性が高まった。次年度は、時間別の網掛け実験などを実施し、実際にこれらの夜行性訪花者がゲットウの槽受粉に寄与しているかを検討する。また、南大東島のゲットウについてcata-型とana-型の比率を調査し、この地域においてana-型が欠落していることが明らかとなった。cata-型のみであることが大東諸島のゲットウが結実しない理由の一つと予想されたが、沖縄島でおこなった袋かけ実験の結果では、cata-型のゲットウにおいて5~10%の割合で自動的自家受粉による結実が見られた。このことから、大東諸島のゲットウに結実が見られないことの理由については、さらに詳細な調査が必要だと考えられる。アオノクマタケランや他のハナミョウガ属植物についてcata-型とana-型の比についての予備調査をおこなった結果、沖縄島北部のアオノクマタケランでは性比の偏りは確認できなかった。クマタケランについてはこれまで情報がなかったが、今年度の調査によりcata-型とana-型の両方が存在することが確認できた。クマタケランは結実しないとする文献もあり、その理由として本種がアオノクマタケランとゲットウの雑種である可能性が指摘されている。しかし、本種の訪花昆虫の予備的観察から、効果的な送粉者がいないことが結実率が低いことの原因ではないかと推定された。これについてもさらに詳細な調査をおこなう予定である。
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Research Products
(1 results)