2012 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯島嶼域におけるハナミョウガ属(ショウガ科)の送粉・交配システムに関する研究
Project/Area Number |
22570095
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 准教授 (50284948)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ハナミョウガ属 / 送粉機構 / 両掛け戦略 / ショウガ科 |
Research Abstract |
琉球大学構内に設置した調査区において、訪花昆虫とゲットウの匂い分泌パタンの関係を明らかにするため、ハンディー匂いモニター(omx-sr)を用いた相対的匂い強度の日変化を調査した。その結果、開花時に低かった匂い強度は12:00より18:00にかけて強くなり、日中のみではなく、薄暮の時間帯にも匂いが放出されていることが確認された。cata-型、ana-型ともに同じ傾向を示し、差は見られなかった。沖縄島のゲットウでは、18:00-19:00頃にかけて昼行性・夜行性のスズメガ類が多数飛来して吸蜜していたことから、ゲットウがこれらの昆虫の行動時間帯に合わせて匂いを分泌している可能性が示唆された。南大東島のゲットウ(ハナソウカ)についても同様の調査をおこなったところ、沖縄島での調査結果と比較して匂い強度が半分以下と低く、また、顕著な日変化も認められなかった。このことは、南大東島のゲットウの訪花昆虫相が貧弱(傳田 未発表)であることと関係があると推測される。 ゲットウの匂い成分に夜行性スズメガ類の誘因に関係するとされる物質(linalool)が含まれるかどうかを確認するため、2012年6月6日に匂いのサンプリングをおこない、沖縄高専の協力を得て成分分析をおこなった。その結果、ゲットウの匂い成分の中にはlinaloolが多量に含まれており、このことがスズメガ類の誘因と関係しているのではないかと考えられる。 大東島のゲットウ(ハナソウカ)について、当該年度も結実を確認できなかった。花粉の稔性を調査した結果、沖縄島のゲットウがcata-型、ana-型ともに90%以上と高い値を示したのに対し、南大東島のゲットウでは58.2±9.6と著しく低い値を示した。このことから、南大東島のゲットウは何らかの理由で不稔になっている可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展しているが、昨年度、一昨年度は台風の影響で極端に花付きが悪かったことに加え、調査区が大きなダメージを受け、予定していた実験の一部が実施困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度はゲットウの状態も良く、調査区の個体も順調に生育しており、昨年度から継続している調査を予定通り実施できると考えられる。特に、匂い強度と訪花昆虫相に関する調査については、昨年度のデータを補完することで、今年度は成果を取り纏め、論文投稿できると考えている。
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