2011 Fiscal Year Annual Research Report
暖温帯~熱帯域の浅海生物の遺伝的多様性からみた起源に関する研究-甲殻異尾類を例に
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22570101
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朝倉 彰 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40250138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青塚 正志 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40106604)
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Keywords | ヤドカリ / 種分化 / サンゴ礁 / 岩礁 / 熱帯太平洋 |
Research Abstract |
本年度は、日本の温帯域の岩礁集団として房総半島、伊豆半島、紀伊半島、九州の北西部からイソヨコバサミClibanarius virescensを採集し、ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子の解析をおこなった。また熱帯域の集団としては沖縄の沖縄本島、また海外からは、台湾およびホンコンからイソヨコバサミを採集し、同様の解析を行った。これらの調査地のうち、沖縄のみがサンゴ礁の集団でありリーフフラットの比較的上部に生息するものである。それに対してほかの集団は、主として火山岩(特に玄武岩が多い)性の岩礁の潮間帯の下部に生息するものである。その結果の遺伝子の類似度を調べたところ、サンゴ礁集団が、他の地域とやや異なることが見出された。これはサンゴ礁集団だけが、遺伝的分化をおこしていることを示唆するのかもしれない。 またサンゴ礁集団と岩礁集団において、歩脚の色彩や模様の違いを調べたところ、有意な差を見出すことができた。サンゴ礁集団の個体は第二、三歩脚では緑が主たる地の色であり、また指節が全体として黄色い模様がはいる傾向にある。一方、岩礁集団の個体は第二、三歩脚では濃い藍色が主たる地の色であり、また指節には2つの黄色いリング模様がはいる傾向にある。また形態的には大きな違いはないものの、プロポーションにおいては、やや違いがあり、サンゴ礁集団においては甲が幅広い傾向にある。 さらに両集団から幼生(第一ゾエア)をとることができたので、その色彩と形態の比較を行ったが有意な差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は日本のみならず、対象生物のヤドカリ類の一種イソヨコバサミを、広く太平洋、インド洋域の標本を採集し解析し、また生態的行動的なデータをとる必要があるが、これまでで、すでに日本の暖温帯のほとんどの地域に加え、海外では、ホンコン、台湾から標本が採集され、遺伝子解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、インド洋を中心とする海域の標本を収集する。また熱帯のサンゴ礁集団と、温帯の岩礁集団の違いを明確にするための、生態的および行動学的研究を進める。また遺伝子プールの大きさや拡散速度などを推定するために、熱帯集団と温帯集団における幼生発生のプロセスと幼生期間を飼育によって明らかにしたい。
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