Research Abstract |
ヒアロスキファ科は,ビョウタケ目中最大の種数を含む科である.本菌群は,大きく1)子実体形成菌糸層を持ち,無柄の子嚢盤を形成するArachnopeziza類,2)中型から大型で槍形の側糸か,顆粒を有する毛を持つLachnum類,3)小型で,さまざまな形態の毛をもつHyaloscypha類の3群から構成されるが,さらにこれらを細分化する意見もあるなど,科内分類群については見解の一致を見ていない.演者らは,2)について複数遺伝子を用いた系統解析を行ない,属レベルの分類を整理した.そこで本研究においては,残りの2群について,同様の解析を行ない,科内分類について考察した,上記1),3)群に属する11属34種58株を用い,ITS-5.8Sリボゾーム領域(ITS),LSUのD1-D2領域(D1D2),polymerase II second largest subunit (RPB2)の3遺伝子を結合して最尤法で解析した.アウトグループは,2)群に属するLachum virgineumである.内群の単系統性は強く支持され,大きく次の3つのクレードが見出された.(1)Hyaloscypha,Hyalopeziaza,Micropodiaによって構成され,強く支持された.2.種の変種を含むHyaloscypha albohyalinaは,側系統であることが判明した.(2):Arachnopeziza属,強く支持されたが,(1)との系統関係は強くはサポートきれなかった,(3):(1),(2)以外の種.全体の支持は低かったが,この中には強く支持されるHyphodiscusが含まれた.ヒアロスキファ科の属は毛の性状を主要形質としてまとめられているが,属のまとまりはおおむね支持された.また,フィアロ型アナモルフCatenuliferaを共有するHyphodiscusが支持されたのに対し,単系統のHyaloscyphaにはcheiromycella,Pseudaegeritaの二つが対応し,全出芽のアナモルフの系統学的意味について疑問が呈された,次年度はシークエンスデータ・種群を追加して継続する
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