2011 Fiscal Year Annual Research Report
多様な種分化をした子嚢菌類の系統に基づいた新分類体系の研究
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22570102
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (60392536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (10509417)
出川 洋介 筑波大学, 生命環境科学研究科, 助教 (00311431)
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Keywords | チャワンタケ類 / ビョウタケ目 / ヒアロスキファ科 / 分子系統学 / ITS-5.8S遺伝子 / D1D2領域 / RPB2領域 / アナモルフ |
Research Abstract |
ヒアロスキファ(ヒナノチャワンタケ)科は70属900種を超えるビョウタケ目最大の科である。報告者らは、本科の系統分類に興味を持ち、日本産菌類相を明らかにすると同時にその分子系統学的解析を行い、分類体系の再検討を行ってきた。本科は1)子実体形成菌糸層を持ち、無柄の子嚢盤を形成するArachnopeziza類、2)中型から大型で槍形の側糸か、顆粒を有する毛を持つLachnum類、3)小型でさまざまな形態の毛をもつHyaloscypha類の3群から構成されるが、さらにこれらを細分化する意見もあるなど、科内分類群については見解の一致を見ていない。報告者らは2)について複数遺伝子を用いた系統解析を行ない、属レベルの分類を整理するとともに、ほぼ単系統であることを明らかにした。次に、残り二群について予備的検討を行い,いくつかの分子系統学的に強く支持される系統群を明らかにした。上記三群に加え、他のビョウタケ目菌類も含めて解析を行ない、本科の分類を考察した。上記1),3)群に属する22属26種を用い,ITS-5.8Sリボゾーム領域(ITS),LSUのD1-D2領域(D1D2),polymerase II second largest subunit(RPB2)ミトコンドリアSSU(mtSSU)の4遺伝子を結合して最尤法(RAxML)で解析した結果、2)は単系統であることが示され,これらをLachnaceaeとして独立させる見解(Raitviir 2000)を支持した。これに対し、1),3)の二群は複数のクレードに分解し、これらの菌群の分類は支持されなかった。本科の基準属であるHyaloscyphaは、よくまとまったクレードを形成したが、このほかに複数属からなる別なクレードが強く支持された。ヒアロスキファ科の属は毛の性状を主要形質としてまとめられているが、属のまとまりはおおむね支持される一方で、類似した形態が収斂進化によって生じていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
系統解析もほぼ順調に推移しており、材料の収集も比較的容易になされている。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、菌類についてのバーコード遺伝子が決定(ITS-5.8S領域)された。そこで、すべての材料について、同遺伝子領域を解読して、バーコード遺伝子データベースを構築するとともに、系統学的に近縁なものについては形態的観察も詳細に行なって、今後の研究に資する。必要なものについて、さらに別領域の遺伝子を解読し、ビョウタケ目全体についての系統関係について理解を深める。
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