Research Abstract |
追加材料とするツルクモヒトデ類の標本を,日本周辺海域(日本海,東シナ海,本州太平洋岸)における調査航海で採集することにより新たに入手した.また,米国のスミソニアン自然史博物館を訪問し,所蔵しているタイプ標本やその他の標本の分析を行った,これらの標本を材料として用い,従来から用いられてきた分類学的形質の観察,走査型電子顕微鏡による骨片の形態の詳細な観察,ならびに分子系統解析のためのDNAの採取を行った.これらの観察によって判明した分類学的知見を論文にとりまとめ,タコクモヒトデ科の未記載種を新種として発表するとともに,タコクモヒトデ科の2つの属を整理して,1新属を打ち立てて発表した. 分子系統については,核DNAの18S rRNA,28S rRNA,ミトコンドリアDNAの16S rRNAの部分配列を用いて,これまで分子標本が得られた種を対象として系統解析を行った.その結果を論文としてとりまとめ,ツルクモヒトデ類の科レベルでの分類の見直しを提案した.より精度の高い分子系統解析を行うために,COI領域についても解析を進め,さらに分析を続け,カバーする種数を増やしている. 分子系統解析によって,腕の分岐の進化は大きな系統とは無関係に独立して複数回生じてきたことが示唆された.腕の分岐のパターンがどのように進化したのかをより詳しく理解するために,腕骨の形態,構造を詳細に調べるため走査型電子顕微鏡で観察を行うとともに,X線CTスキャンによる観察の準備を始め,さらに包埋標本により,硬組織と軟組織両方の断面像の観察を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に目的として掲げた,追加標本の入手,スミソニアン博物館におけるタイプ標本の調査,標本の形態観察,DNA塩基配列の分析ともに,計画通りに実施することができた.また,分類学的な成果および分子系統解析については論文の発表にこぎつけた.形態観察については,走査型電子顕微鏡による観察を順調に進めるとともに,X線像の観察に着手し,樹脂包埋による断面観察の準備も始めている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も形態観察と分子系統解析を当初計画通りに進めることによって,目的は達成されると考えられる.予定していたX線CTによる骨片微細構造の観察に加え,新たに,包埋標本を作製することにより,硬組織と軟組織を含めた断面像の観察も加えることにより,さらに良好な観察を行う可能性についても検討し,課題のさらなる進展につとめたい.
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