2010 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体シグナルにおける脂肪酸結合タンパク質の機能解析
Project/Area Number |
22570112
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤井 博 信州大学, 農学部, 教授 (90165340)
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Keywords | 核内受容体 / 脂肪酸結合タンパク質 / 脂肪酸 / 胆汁酸 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 / 癌転移 / マイクロRNA |
Research Abstract |
核内受容体PPARあるいはFXRのリガンド輸送に関与している脂肪酸結合タンパク質(FABP)の機能を解析することによって、これらの核内受容体シグナルの変異に起因する疾患発症機序の解明を目的とし、以下の研究成果が得られた。 1.核内受容体PPARシグナルにおけるFABP5/C-FABPの機能解析 FABP5による前立腺癌の転移能獲得機構を明らかにするために、高発現したFABP5によって活性化される遺伝子VEGFに着目し、FABPの過剰発現によるVEGF遺伝子の発現誘導機構を解析したころ、VEGF遺伝子は脂肪酸によって発現が誘導された。また、細胞質に局在しているFABP5が、脂肪酸の存在下で、核内へ移行することを明らかにした。VEGF遺伝子はPPARδのアゴニストによって活性化されることから、前立腺癌で高発現したFABP5が核内ヘリガンド(脂肪酸)を輸送し、核内受容体PPARδへ供給することによって、転移能獲得の鍵分子であるVEGFの遺伝子発現を亢進させる可能性が示唆された。また、FABP5と特異的に相互作用するタンパク質を免疫沈降法で探索し、いくつかのタンパク質の存在が示唆された。今後、これらのタンパク質の同定と癌細胞におけるFABP5の機能発現にいかに関与しているか解析する。 2.核内受容体FXRシグナルにおけるFABP6/I-BABPの機能解析 FABP6/I-BABPが、ヒト大腸癌で高発現し、大腸癌の増殖を正に制御していることから、大腸癌の癌化過程におけるFABP6の機能解析を目的とした。胆汁酸あるいはFXRのアゴニストによって、FABP6だけでなく、いくつかのmiRNA遺伝子の発現が正あるいは負に制御されていることが示唆された。このことは、胆汁酸がFXRを介して、FABP6やmiRNAの発現を制御し、細胞の癌化過程においてなんらかの機能を果たしていることを示唆しており、今後、FXRに応答するmiRNAの同定と機能解析、大腸癌におけるFXRおよびFABP6の機能解析をする。
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