2011 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体シグナルにおける脂肪酸結合タンパク質の機能解析
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22570112
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤井 博 信州大学, 農学部, 教授 (90165340)
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Keywords | 核内受容体 / 脂肪酸結合タンパク質 / 脂肪酸 / 胆汁酸 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 / 癌転移 / miRNA |
Research Abstract |
核内受容体PPAR/FXRと脂肪酸結合タンパク質FABPシグナルの変異に起因する疾患(癌)発症・進展機序の解明を目的とし、以下の研究成果が得られた。 1.核内受容体PPARシグナルにおけるFABP5/C-FABPの機能解析 本研究で、高発現したFABP5による転移能獲得機構を解析し、FABP5がリガンド(脂肪酸)依存的に細胞質から核内へ移行し、核内でp68/DDX5 (ATP-dependent RNA helicase)と特異的に相互作用し、この相互作用が、脂肪酸で増強されることを見出した。一方、P68は転写共役因子としても機能していることから、p68は、FABP5による転移能獲得に関与している遺伝子の特異的転写複合体のコンポーネントとして機能している可能性が示唆された。今後、FABP5による転移能獲得におけるp68機能解析が必須である。また、脂肪酸依存的なFABP5の核移行は、脂肪酸をリガンドとするPPARシグナルの活性化につながる可能性を示唆しており、VEGF以外のFABP5の下流標的遺伝子の同定も必須課題である。 2.核内受容体FXRシグナルにおけるFABP6/I-BABPの機能解析 本研究では、大腸癌におけるFXRおよびFABP6/I-BABPの機能解明を目的とした。悪性ヒト大腸癌細胞Lovoを用いて、FXRのアゴニストによって変動する遺伝子を同定した。また、FXRシグナルによって制御されているmiRNAをいくつか同定したが、これらの標的遺伝子の同定はできていない。更に、高発現したFABP6と特異的に相互作用するタンパク質の同定を試みたが、まだ同定できていないため、来年度の課題の一つとする。更に、最近報告された、FABP6のサブタイプ(FABP6-L/I-BABP-L)の機能についても解析し、FABP6との機能的差異について検証する。今後、FXRに応答するmiRNAの機能解析、大腸癌におけるFXRおよびFABP6の機能を解析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、FABP遺伝子の発現レベルと癌細胞の増殖および転移能獲得が密接に関係していることを見出し、その分子機構を解析してきた。その結果、高発現したFABP5がリガンド(脂肪酸)依存的に細胞質から核内へ移行することを明らかにした。また、FABP5は核内でp68/DDX5 (ATP-dependent RNA helicase)と特異的に相互作用し、この相互作用が、脂肪酸で増強されることを見出した。更に、核内受容体FXRシグナルによって制御されるmiRNAも同定した。以上のことから、本研究は当初の計画通り概ね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)核内受容体PPARシグナルにおけるFABP5/C-FPBPの機能解析 これまでに、FABP5と特異的に相互作用するタンパク質としてp68/DDX5を同定していることから、まずFABP5による転移能獲得におけるp68/DDX5の機能を解析する。次に、FABP5によって活性化される下流標的遺伝子を同定し、FABPの過剰発現による標的遺伝子活性化機構の詳細を解析する。更に、悪性腫瘍細胞におけるFABP5遺伝子の特異的転写活性化機構についても解析する。 (2)核内受容体FXRシグナルにおけるFABP6/I-BABPの機能解析 まず、FXRの標的遺伝子FABP6によるアポトーシス抑制機構を解析する。最近報告されたFABP6のサブタイプ(FABP6-L/I-BABP-L)の機能についても解析し、FABP6との機能的差異について検証する。次に、高発現したFABP6によって活性化される遺伝子群およびFABP6と特異的に相互作用するタンパク質を同定する。更に、FXRによって制御されるmiRNAの標的遺伝子の機能を解析する。 来年度は最終年度になるため、核内受容体/FABPのクロストーク機構と細胞の癌化・転移の関連性に焦点を当てて、研究を推進する。
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[Journal Article] Diagnosis of ischemic small bowel disease by measurement of serum intestinal fatty acid-binding protein in patients with acute abdomen : a multicenter, observer-blinded validation study2011
Author(s)
T.Kanda, A.Tsukahara, K.Ueki, Y.Sakai, T.Tani, A.Nishimura, T.Yamazaki, Y.Tamiya, T.Tada, M.Hirota, J.Hasegawa, H.Funaoka, H.Fujii, K.Hatakeyama
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Journal Title
J.Gastroenterol.
Volume: 46
Pages: 492-500
DOI
Peer Reviewed
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