2011 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の結晶化を促進する人工蛋白質リガンドの構築法に関する研究
Project/Area Number |
22570114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 紀通 京都大学, 医学研究科, 助教 (10314246)
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Keywords | 膜輸送体 / X線結晶構造解析 / 結晶化リガンド / 抗体フラグメント / ファージディスプレイ |
Research Abstract |
結晶構造解析の対象として、ラット由来フルクトーストランスポーターGLUT5を選定した。哺乳類細胞において細胞膜を介した糖の受動輸送は、促進拡散ヘキソース輸送体(GLUTs glucose transporters)による受動輸送により行われる。GLUTsには14種類のアイソフォーム(GLUT1~14)が存在するが、それらのX線結晶構造解析は皆無である。GLUTsの構造を決定し、糖輸送の分子機構や基質認識特性の構造的基盤を明らかにすることにより、細胞内のヘキソース濃度の調節、ひいては糖尿病や生活習慣病の予防・改善に資する新たな知見が得られると期待できる。 昨年度の当研究課題において、ラット由来GLUT5トランスポーターに対してFv抗体フラグメントを作製し,GLUT5/Fv複合体結晶が得られている。また,この複合体結晶について結晶化条件の最適化を行い,X線回折実験を実施した結果,最高で3.7A分解能程度まで反射を示すデータが得られている。本年度は、(1)さらに分解能を改善すること,(2)位相決定のために重原子置換体の回折データ収集を行うこと、の二点を目指した。 各種の添加剤等により結晶中の蛋白質間の相互作用を安定化し結晶の質をさらに向上させた。また、Fv抗体フラグメントの分子表面のうち結晶パッキングに関与すると予想される部位に存在するLys、Glu、Gln等の側鎖の大きいアミノ酸残基をAla、Thr,、Tyr等に置換することにより、分子表面のエントロピーを低下させ結晶パッキングの改善を図った。このような結晶最適化のプロセスには多数の添加剤/Fv変異体を組み合わせて作製した結晶サンプルをSPring-8放射光施設で回折実験に供した結果、最高で3.2Aの分解能の回折データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した技術の実証試験として哺乳類SLC輸送体について構造解析可能な良質結晶を得ることに成功しており、新規構造の決定にあと一歩というところに到達できている。この結果は、本研究で作製した抗体フラグメントが結晶化リガンドとして良好に機能しうることを強く示唆しているので、当初の研究計画に沿って順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現状の分解能の回折データセットを解析に用いた場合,Fv部分の構造モデルの分子置換だけでは位相を決定することができないので重原子置換体結晶の回折データを収集することが今後必要となる。すでにGLUT5/Fv複合体をHgやPb化合物で修飾することによって得た同型置換体結晶があるので、XAFSを行い、異常分散が認められた波長でデータセットを収集する予定である。研究計画の変更等はない。
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