2011 Fiscal Year Annual Research Report
シャペロニンGroELのドメイン間情報伝達機構に関する機能的・速度論的解析
Project/Area Number |
22570119
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
溝端 知宏 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (50263489)
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Keywords | シャペロニン / 円順列変異 / フォールディング / ストップト・フロー |
Research Abstract |
本研究では,大腸菌由来のシャペロニンGroELのサブユニットが持つドメイン構造に注目し,3個のドメインを連結する2ヶ所の蝶番部位にポリペプチド鎖末端を移動させ,この蝶番部位を切断した円順列変異体を用いてGroELの分子メカニズムとドメイン構造との関係を明らかにすることを目指している。平成22年度,23年度の2年間においては,この目標に沿って変異体の作成と評価,並びにストップト・フロー方による変異体の動的構造解析を実施した。その結果,GroELの頂上ドメインと中間ドメイン間を切断した変異体(GroELCP376変異体)では,変性タンパク質の認識・結合を担うGroELの頂上ドメインが特異的にATPの結合・加水分解のシグナルにしたがって構造変化をしなくなったことを突き止め,シャペロニン機能の低下に関する構造的根拠を見出した。一方,GroELの赤道ドメインと中間ドメインを切断した変異体(CP86変異体)については,平成23年度の実験で頂上ドメインにトリプトファン残基の蛍光レポータを導入し,この蛍光を指標に頂上ドメインの構造変化を解析した。興味深いことに,CP86変異体ではATPの結合・加水分解に伴うGroEL頂上ドメインの様々な構造変化が全く検出されなくなった。CP376変異体では頂上ドメインのある1つの重要な構造変化にのみ変異の影響が限定されていた事と対比させ,現在GroELサブユニットにおいて赤道ドメインにATPが結合した後,赤道→頂上ドメイン方向にATP結合のシグナルが伝播し,頂上ドメインの構造変化を誘起しているという作業仮説を立てている。平成24年度にはこのポイントに特に注目し,引き続きこの2種の変異体の評価,特に一旦切断したドメインの連結をジスルフィド結合で再びつなぎあわせた場合に機能・構造上のどのような変化が生じるのか,詳細に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である,GroELのドメイン構造と分子メカニズムの関係を解明するため,2種類の異なる円順列変異体において,その機能的性質の違いを裏付けるようなドメイン構造変化の差異を蛍光ストップト・フロー法で検出することに成功しており,研究は当初の目的を概ね順調に達成していると考えている。また,平成23年度に得られた知見は本研究の新たな方向性を示唆する重要な知見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果を受け,本研究ではGroELのドメイン構造において赤道ドメインから発するシグナルが2ヶ所の蝶番部位を通過して頂上ドメインの構造変化を誘発しているという作業仮説に着目している。今後の研究はこの作業仮説を実証・反証するために引き続き2種類の円順列変異体を中心に機能評価,及び物理化学的解析を行う。CP86変異体については円順列変異の効果を可逆的に比較評価するためのジスルフィド結合導入についてめどが立っており,この変異体を中心に本年度は解析をおこなう。CP376変異体については数種類のジスルフィド結合導入変異体を作成したものの,研究に利用可能な変異体の作成にはいたっておらず,研究の完全実施にあたっての問題点として注意を払っている。
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