2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22570122
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
伊藤 恭子 (新澤 恭子) 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 助教 (70206316)
|
Keywords | 膜タンパク質 / ミトコンドリア呼吸鎖 / X線結晶構造 / 2次元結晶 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
NADH:ユビキノン酸化還元酵素、(以下複合体I)はミトコンドリア呼吸鎖の最上流部に位置し、NADHからユビキノン(Q10)へと電子を伝達すると共にプロトンを能動輸送する巨大な複合体である。反応機構を解朔するためには本酵素の疎水部を含む全立体構造及び活性中心付近の詳細な構造を明らかにする必要がある。ウシ由来酵素の全立体構造解明のために、本酵素が巨大で電子顕微鏡で観察可能である利点、及び詣質膜中で構造が長期間安定に保持される性質を利用し2次元結晶化条件の検索を行いながら3次元結晶化を行っている。 23年度に結晶化において最も重要な精製法の検討を再度行った結果、2次元及び3次元結晶化の結晶性を低下させていた原因となっていた変性酵素の除去が出来るようになった。その結果、2次元結晶における酵素の配列のゆがみや乱れがかなり解消された。昨年問題となっていた頻度についても、電子顕微鏡での観察において支障のない頻度で結晶が確認できるようになった。今後は、更に結晶性を上げると共に再現性の向上を目指す。 分子量が100kDaと巨大な膜タンパク質複合体である本酵素に一分子含まれる、フラビンのラマンスペクトルを精度よく得ることが出来るようになった。また酸化型酵素の鉄硫黄クラスターのラマン線も捉ええることに成功した。23年度においては、NDAH還元系を加えることにより3時間の測定の間還元状態を保った酵素の調製に成功し、還元型酵素のラマンスペクトルも得ることに成功した。還元に伴って消失したピークはフラビンに由来することがわかったことから、他のフラビンタンパク鉄硫黄タンパク質の測定も行い分子量100万と巨大なタンパク質中でのこれらの活性中心の環境について考察することが出来るようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア呼吸鎖において最も複雑で巨大な複合体Iは、L字型という特有の構造を持つことから不安定であるが、これまでに精製法の検討が重ねられ、電子線回折データの収集が可能なレベルの2次元結晶が得られるようになってきた。しかし、再現性にはまだ問題がある。複合体Iの酸化型、還元型のラマンスペクトルを再現性良く得ることができるようになったことは分光学的な解析がこのような巨大な複合体でも可能であることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
電子戦線回折データの収集が可能なレベルの2次元結晶が得られるようになってきたことからその再現性を上げるために更に精製法の検討を進める。2次元結晶が重なりやすい条件をもとに3次元結晶化も詳細に検討を行っていく。 分光学的な解析については、フラビン、鉄硫黄クラスターを含む他のタンパク質の測定も複合体Iと同様な条件で行い、複合体Iに含まれる活性中心の環境についての考察を与える。また1分子含まれると思われるユビキノンについても測定を試みていく。
|
Research Products
(13 results)